dice play

インデックスファンド、米国ETFを中心に、日米の個別株にもちょこちょこ投資(サイコロ遊び)をしています。

「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2022」は統計学的にどれだけ意味があるのか

 

「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2022」(以下、FOY2022)が発表されました。FOYの意義は順位ではなくてファンド愛を感じる熱いコメントだと思います。

 

目次

 

「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」(FOY)とは

FOYは2007年にはじまり、今回が16回目という歴史ある賞です。
元々、モーニングスターファンドオブザイヤーなど、業界関係者がファンドを表彰する仕組みがあったものの、評価基準の関係でインデックスファンドが選ばれにくい傾向がありました。そこで個人投資家の視点で表彰する仕組みを作ったという経緯があるようです。インデックスファンド、アクティブファンドどちらも受賞する可能性がありますが、こうした歴史的経緯からインデックスファンドが選ばれやすい傾向があります。

前回は、一人5点を自由に配分できました。5つのファンドに1点ずつ分散して配分することも、1つのファンドに5点を集中して配分することもできました。

しかし、1位のファンドにあまりにも票が集中するため、今回は1位に3点、2位に2点、3位に1点の合計6点が自動的に配分される仕組みに変更されました。2位、3位に投票しない場合は、投票しなかった順位の点数を放棄したとみなされます。

運営は完全にボランティアで行われており、手弁当で開催している実行委員の皆様に感謝します。

 

FOY2022の結果

「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(通称オルカン)が4連覇を達成しました。2位の得票数の3倍近い票を集め、圧倒的な支持を集めました。
前回2位だった「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」は今回も2位の座を維持しました。
昨年5位だった「iFreeレバレッジNASDAQ100」は20位圏外に落ちました。

「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2022」結果

 

私の疑問

今回の投票者数は135人でした。投信ブロガーは少なくとも800人はいますから、投票率は17%未満となります。もしも投信ブロガーが全員投票したら順位はどうなっただろうかを推測してみました。

 

方法

統計学に「母比率の区間推定」という手法がありますので、これを使ってみます。詳しくはこちら。

bellcurve.jp


なお、私は統計学をかじった程度ですので、使い方が間違っていたらごめんなさい。

まず、各ファンドごとに得票率を求めます。
得票率は投票総数に占める各ファンドの得票数とします。
投票総数=有効投票者数×持ち点=135人×6点=810点とします。
1位のオルカンは170票集めたので、得票率は21%(=170/810)でした。

次に、もしもFund of the Yearを100回やったら95回は真の得票率が含まれるであろう範囲を求めます。(統計学では95%信頼区間といいます。)
この「信頼区間」という概念が難しくてよく理解できません…。詳しくはこちら。

bellcurve.jp


真の得票率はだいたい信頼区間の範囲内にあるだろうというざっくりした理解でいます。

 

結果

下図について、横軸は順位、縦軸は得票率、エラーバーは95%信頼区間*1を表します。

「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2022」の得票率と信頼区間

得票率と信頼区間(詳細)

1位と2位の差は歴然としています。しかし、2位と3位の差はほとんどありません。3位と4位の間、4位と5位の間、…も僅差です。3位と4位は前回のFOYと逆転していますが、一年間で投信ブロガーに意識の変化があったのか、サンプリング誤差(投票者のゆらぎ)なのかは微妙なところです。
サンプリング誤差があっても2位と4位の順位がひっくり返ることは考えにくいです。4位と7位も顕著な差です。
7位と20位を比べると有意な差はありません。7~20位のファンドは回答者がちょっと違うだけで大きく順位が変わってもおかしくないということです。(7位のファンドが20位になりえたし、逆に20位が7位にもなりえた。)
また、19位、20位は圏外になってもおかしくない水準です。*2

昨年5位だった「iFreeレバレッジNASDAQ100」が20位圏外に落ちたのは、顕著な変化だと思います。

 

なお、前回のFOYでは11位のファンドと18位のファンドに有意な差はありません。

「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2021」の得票率と信頼区間

 

注意点

上記で得られた信頼区間は、もしも投信ブロガーから偏りなく投票が得られたらという前提に基づく値です。投票者が偏っていれば、信頼区間が真の値から外れることもありえます。

投信保有者は約1,294万人という推計値があります。今回の投票者数(135人)は0.001%に当たります。

投信保有者数とFOY2022投票者数の関係


2022年の資金流入額トップ*3は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」でしたが、「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2022」(FOY2022)では3位でした。資金流入額第2位の「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」はFOY2022ではランクインしていません。
資金流入額は全数調査ですが、FOY2022は投信保有者の0.001%によるランキングですので、独特な結果になります。

 

おわりに

今回はかなり独特な切り口で「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2022」を眺めてみました。

1位と2位の差は歴然としていますが、2位以下はだんご状態です。サンプリング誤差により順位が1つ上下することは十分あり得ます。特に7~20位は意味のある違いが見出しにくい状態です。
ランキング下位のファンドについて例年順位の変動が激しいという感覚があるかと思います。それはサンプリング誤差に起因する可能性があります。順位の上げ下げに一喜一憂せず、ランキングに入ったことを喜びましょう。
昨年5位だった「iFreeレバレッジNASDAQ100」が20位圏外に落ちたのは、顕著な変化だと思います。

 

投信全体を俯瞰して人気度を測るには、全数調査である「資金流入額」が適していると思います。
「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」の強みはランキングの正確さ(定量的な評価)ではなく、熱いコメント(定性的な評価)にあると思います。個々のファンドについて個人投資家がどう思っているのかは資金流入額からは読み取れません。FOYは個人投資家がファンド愛を叫ぶ場であり、それをまとめて聞くことができることに意義があるととらえるのがちょうどいいと思います。

 

 

 

ブログランキングに参加しています。下のバナーを押して応援いただけるとありがたいです。(バナーを押すとブログランキングに飛びます。)

にほんブログ村 株ブログへ
にほんブログ村


金融・投資ランキング

*1:全体の有意水準を5%にするため、ボンフェローニ補正をかけて、個々の有意水準は20分の1の0.25%(=5%/20)にしています。よって、z値は1.96ではなく3.02にしています。図のエラーバーは99.75%信頼区間を表しています。有意水準5%は統計学で慣例的に用いられる数値です。20は受賞ファンド数です。

*2:信頼区間の下限値が0%未満だから。

*3:

www.morningstar.co.jp