Monex Activist Fund(まふ)3周年
Monex Activist Fund(以下、「まふ」または「MAF」)が3周年を迎えました。
目次
- ファンドの概要
- ここ一年の動き
- ポートフォリオの組み方
- 企業との対話の状況
- 配当込みTOPIXに劣後するパフォーマンス
- 高い経費率がパフォーマンスの足を引っ張った
- 資金流出が目立ち始めた
- まとめ
- 関連ファンド
- お知らせ
ファンドの概要
こちらのプロモーションビデオをみるとファンドの特徴を知ることができます。
対話を通じ、変革を後押しすることにより、企業価値の向上、株価の上昇へと導いていくことを目指した個人投資家向けのアクティビストファンドです。
マネックスグループのカタリスト投資顧問が企業との対話の中心的な役割を果たしています。
マネックス・アセットマネジメントは目論見書の作成など比較的裏方的な役割になっています。
ここ一年の動き
2022年6月 「ESGの女神」小野塚さんがカタリスト投資顧問を退社
2023年1月 松本さんがマネックス証券の会長を退任*1。まふに注力。
2023年3月 元さわかみ投信の草刈さんがカタリスト投資顧問に入社
2023年3月 松本さんがブルームバーグのインタビューに答え、アクティビストファンドを3年で15倍にすることを目指すと表明*2
ポートフォリオの組み方
まふはエンゲージメントとマーケットインサイトの二つの戦略を組み合わせた運用をしています。
エンゲージメントについては、少数の企業と面談をして、改善を働きかけます。
特化型運用を掲げており、1銘柄の組入比率が10%を超えることがあります。
2023年3月度月報によると、上位6銘柄で約50%、上位10銘柄で約70%に集中投資しています。
以前は個社との対話に支障が出る恐れがあることを理由に組入社名を運用報告書で年一回だけ公表していましたが、2023年6月度月報より組入上位5銘柄を3か月遅れで公表しました。
2023年3月~6月は大日本印刷に18%程度も配分しています。*3
マーケットインサイト戦略については、市場動向に応じて、個別銘柄や先物を機動的に売買します。
まふは日々資金流出入のあるオープン型のファンドなので、急な資金流出入に備えるために同戦略を取り入れているとのこと。
先物を使って純資産総額を超えるポジションを建てることも可能ですが、ここ一年はそのような無茶はせず、純資産総額の1割を現金で持ち、ほぼ同額を先物で買い建てる運用をしています。
企業との対話の状況
月報で興味深い記述をいくつか見つけたので引用します。
個社だけでなく市場全体にアクティビスト活動を実施していることがうかがえます。
2022年8月度月報
従業員の処遇改善についても問題意識を持たれていたため、自社株買いによって取得した自己株式の活用方法として、RS(Restricted Stock:譲渡制限付株式)形式での株式報酬を進言し、結果、従業員向けまで含む幅広いRS形式での株式報酬を導入いただきました。
2022年10月度月報
当ファンドでは、対話を行う企業に対し、資本市場の視点を持つ社外取締役候補の紹介も行っております。
2023年2月度月報
東京証券取引所(以下「東証」)が市場区分変更の実効性向上に向け、市場関係者らが参加する有識者会議(市場区分の見直しに関するフォローアップ会議)を設置しており、カタリスト投資顧問株式会社取締役会長である松本大もメンバーとして、東証へのエンゲージメントを行っている(中略)
フォローアップ会議も回を重ね、その成果が出てきておりますので、以下にて一例をご報告申し上げます。
2023年1月25日に開催されたフォローアップ会議では、上場会社の資本コストや株価・時価総額への意識改革やリテラシー向上を促し、改善に向けた取組を促進することを目的に、具体的な対応案が東証から掲げられました。
継続的にPBRが1倍を割れている会社には、改善に向けた方針や具体的な取組について、開示を強く要請するとの記載があり、今春から企業経営陣へは大きなプレッシャーがかかることが予想されます。
2023年4月度月報
東京証券取引所(以下「東証」)が市場区分変更の実効性向上に向け、市場関係者らが参加する有識者会議(市場区分の見直しに関するフォローアップ会議)を設置しております。
会議のなかで、実際に対話を行う社外取締役が限定的で、そもそも自身の役割を十分に認識していない社外取締役が多い、ということが問題視されました。
経済産業省の「社外取締役の在り方に関する実務指針」を全上場会社の社外取締役に配付し意識変革を進めるよう弊社取締役会長の松本大が働きかけ、これが実現することとなりました。
配当込みTOPIXに劣後するパフォーマンス
設定日から直近(2023年9月15日)までのまふの年率リターンは13.1%でした。
一方、配当込みTOPIXへの連動を目指す「eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)」(以下、Slim TOPIX)の年率リターンは17.2%でした。
まふは4.0ポイント劣後したことになります。
まふは2022年10月まではSlim TOPIXに追随していましたが、その後徐々に差が開き、ここ3か月くらいは大きな差が開いた状態です。
なお、まふは配当抜きTOPIXにはおおむね追随できています。
高い経費率がパフォーマンスの足を引っ張った
第3期(2022年3月11⽇〜2023年3月10⽇)のリターンに関して、まふは+10.1%、Slim TOPIXは+13.0%でした。まふは2.8%劣後しました。
経費率はまふが2.4%、Slim TOPIXが0.16%でした。まふが2.2%高くなりました。
よって、劣後したパフォーマンスの大部分は高い信託報酬によります。
ただ、まふは膨大な労力を投じて対話をするのが売りなので、安易に経費率が安ければいいとは思いません。
今期まふは成功報酬を計上できませんでした。
成功報酬は、基準価額が設定来高値を更新したときに発生します。
一般的にはファンドの費用が安いに越したことはないですが、まふは逆に成功報酬が発生しないことが問題になります。
2022年12月度月報には、2022はエンゲージメント戦略の難しい年だったと説明されています。
ロシアによるウクライナ侵攻から始まった2022 年は、エネルギー資源の高騰、インフレの加速や急激な為替変動など、いくつもの変化が起きた一年でした。(中略)エンゲージメント活動における企業トップとの対話では、企業価値向上への意識はあるものの、外部環境への対応に追われている企業が多く、変革のための一歩を促すことが容易ではなかったと感じています。
しかし、第4期に入って5、6、7、9月に成功報酬を計上しているのは良い兆候と思います。
資金流出が目立ち始めた
2022年7月より、資金流出が流入を上回るようになっています。個人投資家はしびれを切らし始めたのかもしれません。2023年8月にまとまった流入があったのはいいことです。
まとめ
冒頭のプロモーションビデオではマネックス・アクティビスト・ファンドは「着実に成長し続けている」と言っていますが、実際そうは言い難いです。
松本さんはアクティビストファンドを3年で資産15倍という壮大な目標をぶち上げました。機関投資家向け私募ファンドも含めて3千億円を目指すという計算になります。現状、3千億円を超えている公募の日本株ファンドは「ひふみプラス」「フィデリティ・日本成長株・ファンド」「さわかみファンド」の3つしかありません。*4
まふは日本の株式市場を活性化させるために必要な存在だと思いますので、引き続き注目していきたいと思います。
関連ファンド
スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンド(愛称:対話の力)
お知らせ
以前は週一本の投稿を目指していましたが、私の関心事が投資以外のことに移ったため、3か月ほど休載していました。今後は月一本投稿できればと思います。ご容赦ください。
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*1:マネックスグループ「執行体制変更に関するお知らせ」2023年1月4日
*2:マネクスG松本社長、アクティビストファンドを3年で資産15倍に - Bloomberg