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インデックスファンド、米国ETFを中心に、日米の個別株にもちょこちょこ投資(サイコロ遊び)をしています。

Monex Activist Fund(まふ)の第二期運用報告書を読む

 

Monex Activist Fund(通称まふ)は、日本企業に投資し、対話を通して変革を後押しすることで、基準価額の上昇を目指す投資信託です。第二期運用報告書が公開されたので、読み解きます。

 

第一期の記事はこちら

dice.hatenadiary.jp

 

目次

 

まふとは?

まふはマネックスのグループ会社が運営しています。このファンドのために立ち上げたカタリスト投資顧問の存在感がとりわけ大きいです。カタリスト投資顧問は運用会社であるマネックスアセットマネジメントに投資助言を行うという立場になっています。まふはマネックス証券だけでなく、SBI証券楽天証券でも買えます。

アクティビストというと経営陣に敵対的なかかわり方をする印象があります。ハゲタカファンドのような。しかし、まふは日本企業に受け入れられるよう穏便なかかわり方をする方針です。まふが経営陣に具体的な提案をし、それを受けて経営方針が変わることを市場参加者が好感することで株価が上がり、まふの基準価額も上がるのを目指しています。

このファンドは個人投資家の意見を募集しており、経営者に伝えることもあるとのこと。意見を投稿した人の4分の3は投資歴10年以上とのこと。以前は質問項目が多く、回答が大変だったのですが、現在は項目がぐっと減って回答しやすくなりました。

まふは十数社と対話をし、ファンドのポートフォリオ過半数を占めるようにしているとのこと。通常、投資信託は一銘柄につきポートフォリオの10%までという取り決めがありますが、まふは「特化型運用」をうたうことで、一銘柄につきポートフォリオの35%まで配分できることになっています。*1
相手との関係もあるため、どの企業にどのような対話を行っているかは基本的に詳しく開示しない方針です。ファンドの組入銘柄も年一回運用報告書で開示されるだけです。

まふはさらにマーケットインサイトという戦略も取り入れています。ポートフォリオの残りの部分で数十社に投資し、機動的に売買をしています。対話を行う企業がポートフォリオに占める割合が非常に大きくなるため、バランスをとる目的でマーケットインサイトを導入しているのだと思います。TOPIXに大幅に劣後しないための対策と私は理解しています。

 

第二期のハイライト

第二期(2021年3月~2022年3月)で公開された取り組みの一つは、NIPPOの公開買い付けの価格が安すぎるとの問題提起です。数社のファンドの賛同を得られたものの、残念ながら価格の見直しには至りませんでした。*2

また、まふが保有していたセプテーニが2022年2月に中期経営計画を発表し、それを市場参加者が好感したことで株価が上昇しました。2022年3月10日現在、セプテーニポートフォリオの4.4%を占めていました。*3

 

ポートフォリオの推移

月報のポートフォリオの情報をまとめたのが下図です。

まふの資産構成

純資産総額を10割とすると、株式9割、現金1割、先物1割とする月が多いです。
つねに現金を1割残しているのは、解約に備えることと先物の証拠金にしているのでしょう。
2021年9月から12月は純資産総額対比2割も先物を建てており、かなり攻めていました。2021年12月に現金が27%と、ほかの月より多くなっているのは、NIPPOの公開買い付けにより現金化されたためだと思います。

 

下図は組入上位5業種の純資産総額に占める割合を示します。

まふの組入上位5業種が占める割合

NIPPOの公開買い付けが始まった2021年9月から終わる12月まで「建設・資材」がポートフォリオの2割を超えています。NIPPOは「建設・資材」に含まれることから、かなりNIPPOに傾斜配分していたことがわかります。

また、2021年6月からは「情報通信・サービスその他」の比率が2割を超え、2022年3月には3割に達しています。セプテーニは「情報通信・サービスその他」に含まれます。

 

下図は各銘柄の時価総額別の内訳を示します。

時価総額別の内訳

より大型な株への移行が見られます。2020年11月には時価総額0.5兆円以下の銘柄が6割を占めていたものの、2022年5月には3割になり、その代わり時価総額1兆円以上の銘柄の割合が増えています。

 

基準価額の推移

まふの基準価額は下図の通りです。

まふの基準価額の推移

参考までにeMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)も併記しています。
NIPPOの公開買い付けが公表された2021年9月から買い付けが完了した12月まではTOPIXをやや上回っています。
また、セプテーニが中期経営計画を発表した2022年2月以降もTOPIXをやや上回っています。
しかし、全体的にはTOPIXと近い値動きをしています。(相関係数は0.94)
まふのボラティリティは18%、TOPIXは17%で、大差ありません。

 

資金流出入の推移

下図はまふの月次の資金流出入を示します。

まふの月次資金流出入

資金流出入はファンドの人気を測る指標の一つです。
2022年2月、3月に大きな流入がありました。SMBC日興証券で取り扱いを始めた影響かと思います。2021年6月に新生銀行で取り扱いを始めたときにもまとまった資金流入がありました。

販売会社が増えると、わあっと資金が流入するのですが、数か月後にはぴたっと流入が止まってしまう傾向が見られます。目立った資金流出がないのは良いことです。

 

実質的な費用

第2期の実質的な費用は4.5%となりました。運用報告書には成功報酬が含まれていないため、この数字は筆者が推計した成功報酬を上乗せしています。
内訳は基本報酬が2.2%、売買委託手数料が0.3%、監査費用等が0.1%未満、成功報酬が2.0%でした。

まふの経費率の推移

まふはコストが高いという意見をよく目にします。アクティビストは、イベント・ドリブン型のヘッジファンドの一種です*4。まふの報酬はヘッジファンドの報酬の相場並みだと思います。

インデックスファンドも普通のアクティブファンドも投資先と対話をしていますが、まふはそれらに比べて対話が充実しているか、それが高い報酬に見合っているかという観点で評価するべきです。とにかく安い報酬を追求するなら、信託報酬0.154%以内のeMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)を選べばよい。

まふはマーケットインサイト戦略により機動的に売買するため、売買委託手数料がかさみがちです。運用報告書に売買高比率(=売買金額/組入株式時価総額)が4.62と記載されており、4回転以上していることになります。第1期に比べてファンドの規模が大きくなったので、売買高比率も売買委託手数料も第1期よりは減少しました。ちなみに、eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)の売買高比率は1.67でした。

成功報酬は、前期は7.7%でしたが、今期は2.0%と大きく減少しました。基準価額が設定来高値を更新したときに、上回った分の22%が成功報酬として発生します。2021年9月に設定来高値を更新して以降、成功報酬は発生していません。基準価額はずるずると下り坂です。2020,2021年は金融緩和で市場全体が右肩上がりで、まふも設定来高値を何度も更新し、成功報酬が入りました。しかし、最近は相場が軟調です。インデックスファンドであれば安いのは良いことですが、まふの成功報酬が減ったのは歓迎すべきとはいいがたいです。

基準価額が設定来高値を更新したときに成功報酬が入るという条件が適切なのか疑問に思います。ファンド固有の要因だけでなく、相場の好不調によっても成功報酬が入るかどうかが決まる仕組みになっています。相場が好調であれば、指数に追従しさえすれば成功報酬が入る形になっています。

何かベンチマークを設定し、それを何%上回ったら成功報酬が入るという条件のほうが、ファンド自身の努力が反映されるので、より適切な気がします。

 

まふに期待すること

インデックスファンドや普通のアクティブファンドと比べて、まふはどれだけ対話が充実しているかの情報発信があるとありがたいです。もちろん企業との率直な対話のため、明かせないこともあるでしょうから、そこまでは期待していません。年に一回マネックスアクティビストフォーラムが開催されるのですが、その際他のアクティビストからの講演を聞くと、まふが何を目指しているのか何となく理解できます。

ガバナンスの基礎知識について、セミナーなどで取り上げてもらえたらと思います。

対面型証券を販売会社として少しずつ開拓していくのがまふの規模拡大に貢献しそうな気がします。

対話の成果が出るのに3~5年はかかるでしょうから、気長に待ちたいと思います。

成功報酬の発生条件が適切かは一考の余地があると思います。

私のポートフォリオに占めるまふの割合は1%程度にすぎませんが、まふに期待はしています。

 

リンク集

info.monex.co.jp

www.japancatalyst.com

www.monex-am.co.jp

 

 

 

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