投資信託は買うときにいくらで買えるのかわからないのはなぜか
「投資信託は買うときにいくらで買えるのかわからないのはなぜか」という議論を見かけました。
私の理解力で説明するとこうなります。
「株式などの価格は刻々変わるので、いくらで投資信託を買えるのかあらかじめ決めておくことができないから。」
目次
Mocha(モカ)の解説
議論のきっかけはMocha(モカ)の記事でした。
ポイントは以下の通り。
「株式や債券は常に値動きをしているので、注文をした時点では投資信託の売買価格が決まっていないからです。」
「投資信託の基準価額は1日に1回しか動きません。」
「価格が決まるのは申込みのあと、その日の取引を締めきって終値が出てからの計算ですから、申込みの時点ではいくらで買えるのかがわからないのです。」
楽天証券の図も併せ読むと、わかりやすいです。
TOPIXインデックスファンドの場合、注文締切時間(普通は営業日の15時)までに申し込むと、その日の終値(15時)で基準価額が算出されます。
S&P500インデックスファンドの場合、注文締切時間(普通は営業日の15時)までに申し込むと、現地のその日の終値(日本時間だと翌日6時(夏時間だと5時))と翌営業日10時のドル円レートをもとに基準価額が算出されます。
例えば、ある人が13時に申し込みをした場合、その日の15時のTOPIXや翌朝のS&P500の値はわかりっこないので、投資信託は買うときにいくらで買えるのかわからないのです。
モカの記事への反論
このモカの記事にかみついたのが水瀬ケンイチ氏。
ちゃんと答えると「基準価額が決まったあとに(その価格で)新規申し込みができると、既存の投資信託保有者の利益が阻害されるため。」だそうです。
私はブラインド方式(投資信託は買うときにいくらで買えるのかわからないこと)に慣れ切っているので、「1日1回しか値が付かない投資信託の基準価額が決まったあとにその価格で新規申し込みができると、新規申し込み者は常に後出しジャンケンできる」という状態が実感を持ってイメージできませんでした。
バックワード・プライシング
ブラインド方式に関連して、たわら男爵氏が興味深い指摘をしています。
ブラインド方式は、英語では「フォワード・プライシング」(当日価格)と呼ばれています。
アメリカでは1968年まで「バックワード・プライシング」(前日価格)が採用されており、日本では1970年にフォワード・プライシングに移行したと言われています。*1
ポイント投資の裏技
この指摘を読んで思い出したのが、ポイント投資の後出しじゃんけんという裏技です。
検索をかければ手口を紹介するブログがいろいろでてきます。例えばこれ。
dポイント投資はポイントが投資信託の基準価額に連動して上下するサービスです。
かつては前営業日の基準価額が当日の17時までのポイント交換に適用される仕様だったそうです。
投資信託の組入上位銘柄は開示されています。dポイント投資で使うファンドは主に米国上場ETFを組み入れており、それらのETFの終値は早朝にわかります。為替レートは10時にわかります。
そうすると、10時過ぎには17時に適用される基準価額がおおよそわかる(つまり、ポイントがどれだけ上下するかがわかる)ので、10時から17時の間に取引すれば濡れ手で粟のように利益を手にできたわけです。
これは「1日1回しか値が付かない投資信託の基準価額が決まったあとにその価格で新規申し込みができると、新規申し込み者は常に後出しジャンケンできる」具体例になると思います。
なお、現在は仕様が変わり、この手口は使えないとのことです。
私見
もし前営業日の終値で買えるTOPIXインデックスファンドがあったとすると、水瀬氏が指摘した公平性の問題だけでなく、運用自体も難しい気がします。前営業日の終値で市場に指値注文を出して当営業日に約定するかもわからないためです。もし約定しなかったら、投信の買い付け申し込みは取り消しになるでしょう。買いたいときに必ずしも買えるとは限らない、使い勝手の悪い投資商品になっていたことでしょう。
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*1:おそらく元ネタはこれ。「投資信託の制度・実態の国際比較(第2部)」