ゴールド(純金)に投資するファンドをまとめました。
ゴールドに投資する意義
通常、同一発行体の債券は年限の長いものほど利回りが高くなります。
しかし、今月、アメリカの10年国債利回りが2年国債利回りを下回りました。
この逆イールドという現象が起きてから1,2年後に景気が後退すると言われています。
米国株式と金は時に逆相関を示すことがあるため、株価下落の保険としてポートフォリオの一部に金を組み入れると良いという考え方があります。
為替ヘッジの有無
為替ヘッジありとなしの両方を用意しているゴールド・ファンドがあります。
どちらを選ぶのがいいか悩むところです。
為替ヘッジなしのゴールド・ファンドとACWIは相関が強いと考えられます。
MSCI ACWIの6割強が米国株なので、全世界株式インデックスファンドはドル円の影響を強くうけることになります。
ドル建て金価格が上がっているときは、円高ドル安になりがちです。
そうすると、円建て金価格はドル建て金価格ほどには上がりません。
そこで為替ヘッジをかけてドル建て金価格に近い値動きを得るわけです。
しかし、為替ヘッジにはコストがかかります。
下図は3か月物米国債利回りから3か月物日本国債利回りを引いた値を示します。
この値は為替ヘッジコストに近い数値になります。
アメリカは政策金利を上げていき、日本は政策金利を現状維持とする見込みです。
為替ヘッジコストはどんどん上がっていくと見込まれます。
為替ヘッジコストが上がれば、ドル建て金価格からコスト分だけ下方乖離していくことになります。
ゴールド・ファンドのまとめ
下表にゴールドに投資する14本のファンドをまとめました。
(出典)リターン、標準偏差、純資産額はモーニングスター、総合経費率は各ファンドの運用報告書等から筆者推計、投資対象は運用報告書等
ゴールド・ファンドのほとんどはETFを通して金の現物に投資します。
米国上場の金ETFであるGLD, IAU, GLDMがよく選ばれています。
「ピクテ・ゴールド」だけはETFを介さず、投資信託を通じて金現物を保有します。
純資産総額を見ると、運用年数が10年を超える「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)」と「三菱UFJ純金ファンド」(以下、ファインゴールド)が700億円を超えています。新しいファンドが2021年に3本設定されており、これらの純資産総額が小さいのは仕方のないことです。
総合経費率は筆者が勝手に呼んでいるもので、筆者が把握できたすべての費用を足しあげたものです。具体的には、以下の総和です。
- 運用報告書の総経費率
(まだ運用報告書を一度も出していないSmart-iは信託報酬で代用) - 運用報告書の売買委託手数料、有価証券取引税
(SMTは半年決算のため、2期分の費用の合計。第一期運用報告書しかなく、かつ運用開始から一年未満の三井住友DSは運用報告書の費用を運用日数で割り、365倍することで年率換算。) - 運用報告書に記載されない費用
(SMTと日興は、投資先のファンドの費用を運用報告書に載せていないので、投資先ファンドの費用を加算)
なお、コストがかかっているにもかかわらず、運用報告書にコストが載らない取引の仕方もあるようです。
実際は総合経費率よりもコストがかかっていると考えるのがよさそうです。
総合経費率と1年リターンの関係を下図に示します。
総合経費率が高ければリターンも下がる関係(右肩下がりの直線が引けること)を期待したのですが、ほぼ横一線に並んでいます。
一番右のオレンジの点(為替ヘッジなしで1年リターンが最も低いファンド)は「ファインゴールド」です。ほかのオレンジの点(為替ヘッジなしファンド)に比べ、リターンが低くなっています。「ファインゴールド」は総合経費率が高い(右に外れている)のですが、それにしてはリターンの落ち込みが大きすぎます。ほかのファンドの投資先は外国のETFや投資信託であるのに対して、ファインゴールドの投資先は東証上場ETFです。よくわかりませんが、この商品設計が一因かもしれません。
「三井住友DS・ゴールドインデックス・ファンド(H有)」の総合経費率が3.46%と突出して高いです。これは売買委託手数料がかさんだことに加え、第1期がわずか3か月しかなかったことが原因です。年率換算によりコストを膨らませる計算をしているため、コスト高に見えやすくなっています。第2期に注目です。
投資信託かETFか
ゴールド・ファンドの多くはETFを買っているだけなので、直接ETFを買うという手もあります。
ETFのメリットを挙げてみます。
- 保有時の費用が安いです。
投資信託は、ETFの費用と投資信託の費用が二重にかかるため、割高です。 - 貸株により収益を得ることができます。
証券会社の信用リスクをとる対価として貸株料を受け取ることができます。ただし、貸株料は雑所得です。 - 早く現金化できます。
ETFは受渡日が約定日の2営業日後なのに対し、投資信託はさらに数営業日かかります。 - 指値注文ができます。
ETFのデメリットもあります。
- 為替ヘッジをつけるのが難しいです。
FXを使ってやれなくはないですが、かなり面倒です。例えば、10万円の金ETF投資において手動で為替ヘッジをかけるとすれば、9万円分を金ETFの現物買い、1万円分を金ETFの信用買い、1万円分をFX口座に入金して10倍レバレッジでドル円をショートすることになるでしょう。(FXをやったことがないので、これでうまくいくかわかりませんが。) - 証券会社が定期買付に対応していないことがあります。
SBI証券の場合、東証ETFを定期買付できないので、手動で買い付ける必要があります。米国ETFは定期買付ができます。 - 米国ETFを買う場合、為替取引やそれに付随する税務処理が必要です。
- 口数買い付けしかできず、金額ぴったりに買うことができません。
投資信託のメリット・デメリットは、ETFの裏返しとなります。
また、ETFを直接売買する場合、投資信託を通してETFを間接的に売買する場合、いずれにせよ基準価額と売買価格に乖離が生じる可能性があります。
売買の料金体系が投資信託とETFで違いますので、これもETFと投資信託を比べる際の検討材料となります。
筆者の評価
「三井住友DS・ゴールドインデックス・ファンド(H有)」のように、設定から日が浅いファンドはもう少し様子を見たいところです。
「ファインゴールド」はほかの為替ヘッジなしファンドと比べて総合経費率が高く、かつリターンが低いことから、要注意です。
「ピクテ・ゴールド」はETFを介さない仕組みなので、ETFにつきものである売買価格と基準価額の乖離は起きません。また、動画による情報発信なども充実しています。
その他のファンドはさほど大きな差がないという印象です。
「ステートストリート・ゴールドF(H有)」はGLDを買うだけのファンドです。
「iシェアーズ ゴールドインデックス」はIAUを買うだけのファンドです。IAUの経費率はGLDより安いです。
「SMT ゴールドインデックス・オープン」と「日興 ゴールド・ファンド」は運用開始からもうすぐ5年になり、安定感があると思います。ただし、投資対象とするETFがステートストリートやiシェアーズのようにかちっと決まっていません。
過去記事
金(ゴールド)へ投資する商品のまとめ - dice play
こちらのボタンをポチッと押すと、たくさんの投資ブログが見られます。