dice play

インデックスファンド、米国ETFを中心に、日米の個別株にもちょこちょこ投資(サイコロ遊び)をしています。

仮想通貨の期待リターン、リスク、主要な資産クラスとの相関係数

 

仮想通貨の期待リターン、リスク、主要な資産クラスとの相関係数をどのように見積もればいいかという疑問をネットで見かけました。

私は暗号資産をポートフォリオの1%を目安に組み入れています。
とあるインフルエンサーが1~2%で十分と言っていたので、何となくそうしていました。

先の疑問は私に向けられたものではないですが、
私がポートフォリオビットコインを組み入れているのは妥当なのかを定量的に問い直すのは有意義なことだと思いました。
そこで、仮想通貨の期待リターン、リスク、主要な資産クラスとの相関係数を試算してみました。

 

仮想通貨はたくさんありますが、私の力量不足により、ビットコインのみを計算します。
主要な資産クラスもたくさんありますが、全世界株式のみを計算します。

 

目次

 

全世界株式のリスク

ビットコインのリスク(ボラティリティ)を計算する前に、全世界株式のボラティリティを計算しておきます。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの全世界株式インデックス・ファンド(以下、SSGA ACWI)の基準価額を用います。

www.ssga.com


SSGA ACWIはMSCI ACWI(円ベース)への連動を目指すインデックスファンドです。
設定日である2017年9月8日(金)から2022年3月25日(金)までの毎週金曜日(休場日の場合は前営業日)の基準価額を用いました。
週次の基準価額の対数騰落率について、標準偏差をとり、年率換算(約7.2倍)しました。

 

この結果、2017年9月からの約4年半の全世界株式のボラティリティは21%でした。

 

日次や月次でも計算できますが、週次で計算した理由は、ビットコインと株式とでは、年間の取引日数が違うからです。
ビットコインは土日祝日休みなく取引されているのに対し、伝統的な資産は平日のみ取引されています。
日次だとこの日数の差を補正するのがやっかいかもしれないと思いました。
また、月次ではデータ数が少ないと思いました。
そこで、週次にしました。

 

ビットコインのリスク

bitFlyerの販売所における円建てビットコイン価格(終値)を収集しました。

bitflyer.com


収集期間はSSGA ACWIと同様です。
週次(原則毎週金曜日)の終値について、対数騰落率の標準偏差をとり、年率換算しました。

 

その結果、ビットコインボラティリティは81%でした。

ビットコインは全世界株式の約4倍荒っぽい値動きをしたことになります。

 

2017年9月以前のビットコイン価格を使わなかったのは、SSGA ACWIの設定時期に合わせるためです。
後付けの理由としては、暗号資産への投資(投機?)ができる環境が整ったのが2017年だからということにしておきます。
暗号資産の交換業者に登録制を導入したのが2017年4月、暗号資産の所得税の計算方法が周知されたのが2017年12月でしたので、これ以前に暗号資産に手を出すのはなかなか難しかったと思います。
(もっと長期のデータで分析したほうが良かったんじゃないかという思いはあります。)

 

ビットコインと全世界株式の相関係数

円建てビットコインとSSGA ACWIの相関係数は0.27でした。
相関が低く、分散投資の対象としては良さそうです。

 

ビットコインの期待リターン

期待リターンの推計は、株式であっても難しいものです。
こちらのコラムでは、期待リターンの決め方の実情について率直に書かれています。
「期待リターンは、実質的に社会的に決まるようなあやふやなもの」とのことです。

media.rakuten-sec.net

 

まして、社会的な評価の定まっていない暗号資産の期待リターンを求めることは困難です。

 

ビットコインは発行上限が決まっていることに着目して、価格を予想するBitcoin stock to flow (S2F) modelがあります。
BuyBitcoinWorldWideによると、S2Fモデルから算出された2022年始の予想価格は1BTC=108kUSD、2025年末に1BTC=1,343kUSDでした。
これは年率換算で88%の上昇となります。
これを、ドル建てのビットコインの期待リターンとみなすことにします。
このモデルだと、半減期が来るまではじわじわ上げ、半減期を迎えるとビットコインの供給がぐっと絞られることで、価格が急騰すると想定しています。
こうした動きを無視して、直線的に期待リターンをあてはめるのは乱暴なやり方かもしれません。

 

為替レートについて、J.P.モルガンの超長期市場予測2022年版(以下、LTCMA2022)では、長期的に年率1.7%のペースで円高ドル安になると予想しています。

am.jpmorgan.com

これは、長期的には購買力平価の為替レートの近辺に落ち着くだろうという見立てです。

 

これらを組み合わせて、円建てビットコインの期待リターンを年率86%と仮定します。

 

LTCMA2022では全世界株式の期待リターンを3%程度と見込んでいます。
一方、S2Fモデルから予想されるリターンは異様に高くなっています。
ちなみに、ビットコインは4年半で年率71%価格が上昇しました。

 

なお、以下のサイトでもS2Fモデルを動かしているのですが、モデルの標準誤差は73%とされています。

s2f.hamal.nl

 

ところで、BuyBitcoinWorldWideによると、半減期の手前の2024年始では1BTC=121kUSDという予想です。
これは2022年始の予想価格を基準にすると年率6%の上昇となります。
為替レートを加味すると円建てで年率4%の期待リターンになります。

 

もっとも、ビットコインは電子ゴミだと考える人にとって、期待リターンはゼロでしょう。

 

ビットコインに必要な期待リターン

ACWIしか組み入れていないポートフォリオビットコインを組み入れるとすれば、ビットコインにどれくらいの期待リターンが必要かを求めてみます。

計算式は以下の通り。
ビットコインの超過リターン≧ACWIの超過リターン*(ビットコインボラティリティ/ACWIのボラティリティ)^2
超過リターンはリスクフリー金利に上乗せされる期待リターン。

media.rakuten-sec.net


LTCMA2022では日本円の期待リターンを0%と置いているので、リスクフリー金利も0%と置きます。
LTCMA2022では円建てACWIの期待リターンを3.3%と置いているので、ACWIの超過リターンを3.3%と置きます。
ボラティリティは先ほどの計算結果を使います。

 

この結果、ビットコインに必要な超過リターンは51%となりました。

ビットコインは全世界株式より3.9倍荒い値動きをするのだから、全世界株式より15倍高いリターンを見込めないと割に合わないことになります。

 

期待リターンを86%と仮定するならば、必要なリターンを満たしていそうです。

 

一方で、期待リターンが10%を超えるようなものはサギだとみなす考え方もあります。
ビットコインに必要な超過リターンはサギレベルなのだから、ビットコインを組み入れるべきではないという見方もできます。

 

計算結果の不確実性

以上、試行錯誤して計算したため、計算方法によっては結果が微妙に変わりました。
例えば、ビットコインボラティリティは81%と算出されましたが、計算方法を微妙に変えると、1、2ポイントずれました。
しかし、結果が50%や100%になったりはしませんでした。
今回は約4年半のデータを使いましたが、期間を10年にしたりすれば、結果はもう少し変わります。
したがって、本稿で記載された計算結果は有効数字1桁だ(2桁目はふらふら変わりうる)と解釈してください。

 

まとめ

以上、ビットコインの期待リターン、リスク、全世界株式との相関係数を試算しました。結果は下記の通りです。(ビットコイン、全世界株式ともに円建て。)

全世界株式のボラティリティ
 21%(2017年9月~2022年3月実績)
ビットコインボラティリティ
 81%(2017年9月~2022年3月実績)
ビットコインと全世界株式の相関係数
 0.27(2017年9月~2022年3月実績)
ビットコインに必要な超過リターン:
 51%(効用関数の考え方を用い算出)
ビットコインの期待リターン:
 86%(S2Fモデルから算出された2022~2025年の予想とLTCMA2022の為替予想を用いた場合)
 ただし、半減期を迎える前(2022~2024)は4%。
 ビットコインを電子ゴミと思う人は、0%

 

なお、この記事は自分のポートフォリオを見つめなおすために書いたのであって、新社会人に暗号資産をおすすめする意図はありません。

 

<つづく>

 

 

 

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