dice play

インデックスファンド、米国ETFを中心に、日米の個別株にもちょこちょこ投資(サイコロ遊び)をしています。

「Tracers グローバル2倍株(地球コンプリート)」の評価(2023年版)

 

「Tracers グローバル2倍株(地球コンプリート)」の第1期運用報告書が出たので、レビュー記事を更新します。

設定当初の記事(2022年2月投稿)はこちらです。

dice.hatenadiary.jp

 

目次

 

この一年の出来事

このファンドはここ一年で大きく変わったことがいくつかあります。

  • ファンド名に「Tracers」がつき、Tracersシリーズの一員となりました。
  • 購入時手数料が無料化されました。
  • 信託報酬率が税抜0.363%から0.181%へと、半額に値下げされました。
  • 信託期間が無期限になりました。

このファンドはインデックスファンドではないものの、パッシブファンドの一種だと運用会社の日興アセットマネジメントは位置づけています。

 

経費率

第1期の総合経費率*1は0.48%でした。

地球コンプリートの総合経費率

アクティブファンドに比べれば安いです。一般的に、第1期は信託報酬以外の経費がかさみがちなので、今後の低下に期待です。さらに、値下げを断行したのも第2期以降の経費低減につながるでしょう。運用報告書によると、第1期に得られた信託報酬の額は消費税を差し引くと200万円を下回ります。

 

パフォーマンス

下図は次の3銘柄の値動きを示します。

地球コンプリート及び関連ETFの値動きの比較

地球コンプリートはオルカンETFよりもコクサイヘッジETFの値動きに似ています。
これは、地球コンプリートが先進国株式部分に実質的に為替ヘッジがかかっているためです。オルカンETFは為替ヘッジなしであり、2022年3月からの円安傾向が強く出ています。
ただし、地球コンプリートは日本株式と新興国株式にも投資をしている点がコクサイヘッジETFと異なります。

 

ボラティリティ*2は以下の通りです。地球コンプリートのボラティリティは為替ヘッジ付き先進国株式(MSCI Kokusai)のボラティリティの約2倍です。

  • 地球コンプリート: 37%
  • オルカンETF: 19%
  • コクサイヘッジETF: 22%

 

ポートフォリオ

2023年1月末現在、現物ETF先物を合わせて189.3%のポジションを持っています。200%よりやや控えめになっています。また、アメリカ株が純資産総額比100%未満に抑えられています。

ファンド立ち上げ当初の2021年12月末は200%を超えるポジションをとり、アメリカ株も100%を超えており、尖りまくっていました。(目論見書では1か国が100%を超えないことを目指していました。)

地球コンプリートの資産配分(2023年1月末時点)

地球コンプリートの国別配分(2023年1月末現在)

 

下のリンクにある開発者の声によると、地球コンプリートはいわゆる「MSCI ACWI指数」よりも広範にカバーするルールをつくり、それをトレースしていくとのこと。

www.nikkoam.com

現状、地球コンプリートはアメリカの小型株をカバーするVanguard Russell 2000 ETF (VTWO)に投資しています。
ACWIは小型株が対象外なので、確かに地球コンプリートの独自性と言えるかと思います。
一方、地球コンプリートは先進国の中でもややマイナーな地域の株式への投資はしていません。
先物流動性が乏しい地域は現物ETFで、流動性が十分な地域は先物で、という形で投資対象が広がっていくのが望ましいように思います。

 

ファンドマネージャー

2023年1月末時点の情報によると、2022年入社で経験年数が3.8年の方がファンドマネージャーを担当しているようです。(つまり他社でファンドマネージャーを2年経験後に転職されてきたということですね。)

 

ETFの信用二階建てとの比較

個人が地球コンプリートの運用を真似しようとすると、ETFの現物を買い、さらに信用取引で同額を買い建てるという方法が考えられます。
いわゆる信用二階建てと呼ばれる禁忌の手法です。

 

以下の3パターンをシミュレーションをしてみます。

  • 地球コンプリートをファンド設定日(2021年12月15日)に50万円買う。
  • オルカンETF(2559)を現物で50万円、信用で50万円を同日の終値で買う。*3
  • コクサイヘッジETF(2514)を現物で50万円、信用で50万円を同日の終値で買う。

信用取引には様々な手数料がかかります。証券会社により手数料は様々ですが、SBI証券のアクティブプランで試算しました。買付手数料はかからず、買方金利、管理費、名義書換料がかかります。*4

ETFの分配金は税引き後の額を利益として扱いますが、再投資はしない(預かり金として持ち続ける)という計算にしました。

 

下図はシミュレーション結果です。

地球コンプリートと自前運用(ETFを用いた信用二階建て)の比較

地球コンプリートをファンド設定日に50万円買った場合の評価損益はコクサイヘッジETF(2514)を同日に100万円買った場合の評価損益と近くなりました。
しかし、2022年5月以降2514の下方乖離が目立ちます。考えられる原因として、日本株のパフォーマンスが先進国株対比で好調だったか、地球コンプリートがリバランスを実施したか、などが考えられますが、確証はありません。

信用二階建ての場合、100万円分買い建てているので、含み損が34万円に達するとロスカットになります。コクサイヘッジETF(2514)の場合、幸い25万円の損で持ちこたえました。

 

資金流出入

資金流出入の状況はファンドの人気度を測る一つの指標だと思います。

下図は月次の資金流出入を示します。地球コンプリートはあまり資金流入がありません。レバレッジをかける攻撃的なファンドであること、2022年は株価が下落基調だったことが要因かと思います。2023年2月は月間で初の流出に転じ、気になるところです。

地球コンプリートの資金流出入

ファンドの純資産総額が10億円を下回ることとなった場合、繰上償還することがあると交付目論見書に書かれています。設定来10億円を下回っており、危険水域にあります。

Tracersシリーズへのリブランディング、信託報酬の大胆な値下げなど、運用会社の努力はひしひしと伝わってきます。

 

まとめ

「Tracers グローバル2倍株(地球コンプリート)」は「地球2つ分」の投資を行うファンドです。

先進国株式部分に為替ヘッジがかかっているため、「MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信」(証券コード2559)よりも「NEXT FUNDS 外国株式・MSCI-KOKUSAI指数(為替ヘッジあり)連動型上場投信」(証券コード2514)に近い値動きをしました。

運用報告書から読み取れるすべての経費は年率0.48%でした。

設定時の2021年12月はレバナス*5が大流行していましたが、2022年の株価下落でレバナスも含めレバレッジ投信は全体的に厳しい環境にさらされました。
また、為替ヘッジにより2022年の円安の恩恵を取りこぼしたのもしんどさに拍車をかけました。

今後も注視していきたいと思います。

 

 

 

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*1:総合経費率とは筆者が勝手に名付けた概念で、運用報告書から読み取れるすべての経費を表しています。以下のように計算しています。
(運用報告書の総経費率)+{(売買委託手数料)+(有価証券取引税)}*365/(期中の日数)

*2:日々の騰落率の標準偏差を年率換算した値

*3:ETFはぴったり50万円買えないので、現物は最小取引単位未満の端数を切り捨て、信用は端数切り上げで、最小取引単位にしてからシミュレーションしました。2514も同様です。

*4:買方金利:年率2.8%
管理費:1か月ごとに1口あたり110円(上限1,100円)
名義書換料:権利確定日をまたぐたびに売買単位当たり5.5円
参考:SBI証券 信用取引にかかる費用

*5:NASDAQ100指数にレバレッジをかけた投資信託