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インデックスファンド、米国ETFを中心に、日米の個別株にもちょこちょこ投資(サイコロ遊び)をしています。

全世界株式インデックスファンドのまとめ

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本記事では日本を含む先進国と新興国の上場株式に時価総額に応じて投資するインデックスファンドを比較します。(3資産均等などは本記事では扱いません。)
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が私の好みです。


全世界株式インデックスファンドは私の好物です。
ポートフォリオ過半数をこのファンドが占めています。
ありのままの株式市場を受け入れ、個人的な相場見通しを一切差し挟まないところが良いです。

また、効率的市場仮説が成り立つならば、時価総額加重平均が最適なポートフォリオらしいです。
ただし、その仮説が成り立っているかは議論の余地がありそうです。
学問の世界では、大胆な仮定を置くことで本質が見えるということがあるようです。
「スタバではグランデを買え」という本の中で、金融工学で多用されるブラック-ショールズ式の説明があります。
この式は対数正規分布を仮定して導かれるそうですが、その分布を使った理由は単に数学的に取り扱いやすかったからだそうです。
べき分布のほうが現実に近いらしいですが、その分布は複雑で計算が難しい。
効率的市場仮説も同様で、細部は現実とは違うが、おおまかに現実を模しているくらいに考えておくくらいがちょうどいいと思います。

さて、全世界株式インデックスファンドはつみたてNISAをきっかけに生まれた、比較的新しいジャンルのインデックスファンドです。
2017年3月31日につみたてNISA適格ファンドの基準が定められ、その中に全世界株式指数が含まれていたことに呼応して、商品が開発されました。
それ以前に全世界株に時価総額に応じて投資するには、アメリカ上場ETFであるVTまたはACWIを買うか、日本株、海外先進国株、新興国株の3本のインデックスファンドを買うしかありませんでした。

以下では、設定日の古い順に紹介します。

iシェアーズ MSCI ACWI ETF (ACWI)

www.blackrock.com
商品性:アメリカ上場ETF
運用会社:BlackRock
設定日:2008/3/26
連動目標:MSCI ACWI
経費率:0.33%

世界の時価総額の約85%を投資対象とします。ウェブサイトの作りが良い。PERが日々開示されたり、保有銘柄の検索やダウンロードができたりして便利です。指数をそのままTickerにしたため、覚えやすい。(紛らわしくもある。)

ETFでは貸株が一般的に行われているようで、ACWIは以下の通りです。(2021/7/31現在)
純資産総額:16,965,824千米ドル
貸付有価証券の時価総額: 115,502千米ドル(純資産の0.7%)
貸付有価証券にかかる受取担保額:121,390千米ドル
貸付収益:1,097千米ドル

Vanguard Total World Stock ETF (VT)

investor.vanguard.com
商品性:アメリカ上場ETF
運用会社:Vanguard
設定日:2008/6/24
連動目標:FTSE Global All Cap Index
経費率:0.08%

世界の時価総額の約98%を投資対象とします。ACWIでは対象外である小型株にも投資します。しかも、経費率の安さが尋常でない。しかし、為替手数料と売買手数料を別途証券会社に支払う必要があるため、短期売買だと経費率の安さを押し殺してしまいます。

また、ACWI ETFと共通のデメリットとして、口数買付になるので、投信のように金額買付ができないこと、為替取引にかかる雑所得が生じる可能性があること、分配金の二重課税を取り戻すには確定申告が必要なことが挙げられます。

海外ETFは国内籍投信と違い何かと骨の折れる手間が多いです。

貸株の状況は以下の通り。(2021/4/30現在)
純資産総額: 28,861,053千米ドル
貸付有価証券の時価総額:176,821千米ドル(純資産の0.6%)
貸付有価証券にかかる受取担保額:189,102千米ドル
貸付収益:1,394千米ドル

全世界株式インデックス・ファンド

www.ssga.com
商品性:国内籍投信
運用会社:State Street Global Advisors (SSGA)
設定日:2017/9/8
連動目標:MSCI ACWI
信託報酬(税込):0.53%
総合経費率:0.61%(2020/11/30現在)

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「全世界株式インデックス・ファンド」の月次資金流入動向

総合経費率は筆者独自の概念で、運用報告書の総経費率に売買委託手数料と有価証券取引税を足した値です。
国内籍投信で最も早く登場したMSCI ACWI連動ファンドです。
しかし、「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」のように信託報酬が0.2%台の先進国株式インデックスファンドが当時すでに存在していたことから、SSGAの「全世界株式インデックス・ファンド」は残念ながらあまり着目されず今に至ります。

楽天・全世界株式インデックス・ファンド

www.rakuten-toushin.co.jp
商品性:国内籍投信
運用会社:楽天投信
設定日:2017/9/29
連動目標:FTSE Global All Cap Index
信託報酬(税込):0.13%
投資対象のETFの経費率:0.08%
売買委託手数料、有価証券取引税、その他費用:0.03%
総合経費率:0.24%(2021/7/15現在)

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楽天・全世界株式インデックス・ファンド」の月次資金流入動向

俗に言う「楽天VT」。

SSGAの3週間後に登場した、VTを買うだけのファンド。
当時、セゾン投信やSBIアセットのEXE-iシリーズなどでETFを組み入れるだけのファンドはありましたが、複数のETFを組み入れるのが当たり前でした。VT一本のみのファンドが組成できることが革新的でした。

第一期運用報告書に記載された売買委託手数料がとても高かったため当時がっかりしました。投信の設定直後は費用が高くなるので、一年程度待つべしとよく言われますが、その典型的な事例になってしまいました。現在は資産規模が大きくなったので、売買委託手数料などの事後的にわかる費用が十分に小さくなっています。

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楽天VTの費用の推移

SBI・全世界株式インデックス・ファンド

apl.morningstar.co.jp
商品性:国内籍投信
運用会社:SBIアセットマネジメント
設定日:2017/12/6
連動目標:FTSE Global All Cap Index
信託報酬(税込):0.07%
投資対象のETFの経費率:0.04%
売買委託手数料、有価証券取引税、その他費用:0.03%
総合経費率:0.12%(2020/11/12現在)

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「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」の月次資金流入動向

雪だるまシリーズの一員。3つのETFを組み合わせて運用。
買い付けるETFはVTI(アメリカ株)、SPDW(アメリカ以外の先進国株)、SPEM(新興国株)。
VTIはCRSPの指数、SPDWとSPEMはS&Pの指数への連動を目指します。
SBIのファンドの連動目標であるFTSEの指数にうまく追随できるのか一抹の不安がある商品設計となっています。

このファンドは当初「EXE-i つみたて グローバル(中小型含む)株式ファンド」という名前でした。
EXE-iシリーズは複数のETFを組み入れるファンドです。
組み入れるETFベンチマークが必ずしもひとつの指数算出会社でないことから、EXE-iシリーズは「ベンチマーク」ではなく「参考指数」という言い方をしていました。
これは、運用会社のコラムでも書かれています。

 EXE-iが、一般的なインデックスファンドと違うのは、厳密にターゲットインデックスに連動することを目標にしていないことです。それじゃあ、目標はなんなのかというと、たとえば”先進国株式”であれば、先進国(日本を除く)の株式市場の動きと同等の投資成果を目指すことで、MSCIの××インデックス連動とかFTSEの××インデックス連動というようなインデックス指数を特定して、ひたすらインデックスとの乖離を最小化するものとは異なるということです。
 そのため、インデックスはあくまで参考指数であり、かつ、その参考指数は変更することもあります。
 趣味のように連動率・乖離率にこだわるのは機関投資家だけで十分であり、投資家の求めるものは、希望する市場からの平均収益を得ることであると考えるからです。
SBIアセットマネジメント EXE-i(エグゼアイ)|はじめてのEXE-i(4)EXE-iの新しい“かたち”

しかし、つみたてNISA適格であることをアピールするために、このファンドは「EXE-iシリーズ」から「雪だるまシリーズ」に、「参考指数」から「ベンチマーク」に位置づけを変えたという経緯があります。「指数がS&PだろうがFTSEだろうが、投資対象はほとんど同じなんだから、値動きも同じようなもんだ。それより安い方がいいだろう?」という運用会社の声が聞こえてきそうです。

確かに費用は最安なのですが、安い費用がなぜ望ましいのか、その目的を考えてみると、(金融機関を締め上げるためではなく、)指数からの下方乖離をできるだけ抑えるためです。本ファンドへの投資を検討するにあたっては、費用の安さと指数との連動性を天秤にかけてどちらをとるのがよいか考慮する必要があると思います。

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

emaxis.jp
商品性:国内籍投信
運用会社:三菱UFJ国際投信
設定日:2018/10/31
連動目標:MSCI ACWI
信託報酬(税込):0.11%
売買委託手数料、有価証券取引税、その他費用:0.06%
総合経費率:0.18%(2021/4/26現在)

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eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の月次資金流入動向

「業界最低水準の運用コストを目指す」(が、その達成を保証等するものではない。)が売り文句のファンド。家電量販店やホテルなどで見られる売り文句を導入。仮に競合でさらに安い信託報酬のファンドが登場しても、わざわざそのファンドに乗り換えなくていいという安心感が支持され、このジャンルのインデックスファンドでは最大の純資産額を誇ります。

日本株式をTOPIXのマザーファンドではなく、わざわざMSCI Japan Indexのマザーファンドを立ち上げる気合のいれよう。

俗に言う「オルカン

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eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の費用の推移

たわらノーロード 全世界株式

たわらノーロード 全世界株式|ファンド情報|アセットマネジメントOne
商品性:国内籍投信
運用会社:アセットマネジメントOne
設定日:2019/7/22
連動目標:MSCI ACWI
信託報酬(税込):0.13%
売買委託手数料、有価証券取引税、その他費用:0.11%
総合経費率:0.24%(2020/10/12現在)

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「たわらノーロード 全世界株式」の月次資金流入動向

運用会社の人には申し訳ないのですが、出オチと言わざるを得ないファンドです。eMAXIS Slimの信託報酬を塗り替える安さで登場したものの、すぐにeMAXIS Slimに追いつかれ、人気(=資金流入)があまりないまま今に至ります。

また、運用会社のアセットマネジメントOneはみずほフィナンシャルグループの一員なのですが、同グループのみずほ銀行みずほ証券では当ファンドを取り扱っておらず、グループ会社からも敬遠されている印象を持っています。三菱UFJ銀行では買えるのは不思議であります。

MSCI Japan Indexのマザーファンドを立ち上げたり、安い信託報酬を提示したり、頑張ったと思うのですが、努力が今一つ評価されていない感じが残念です。

MAXIS全世界株式(オール・カントリー)ETF(2559)

maxis.mukam.jp
商品性:東証上場ETF
運用会社:三菱UFJ国際投信
設定日:2020/1/8
連動目標:MSCI ACWI
信託報酬(税込):0.09%
その他費用:0.08%(決算短信の「損益及び剰余金計算書」の「その他費用」より筆者試算)
総合経費率:0.16%(2021/6/8現在)

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「MAXIS全世界株式(オール・カントリー)ETF(2559)」の月次資金流入動向

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」のETF版です。
東証上場ETFなので、指値注文や空売り、貸株ができます。
SBI証券では貸株金利の下限が0.1%ですので、信託報酬をほぼ帳消しにできます。ただし、貸株の注意点として、証券会社の信用リスクを負うこと、雑所得として申告が必要なことが挙げられます。
マーケットメーカーが参加しているため、基準価額から大幅にかいりした価格で約定することはなさそうですが、ETFの性質上若干のかいりが生じる可能性は否めません。

つみたて全世界株式

www.am.mufg.jp
商品性:国内籍投信
運用会社:三菱UFJ国際投信
設定日:2020/3/6
連動目標:MSCI ACWI
信託報酬(税込):0.22%
売買委託手数料、有価証券取引税、その他費用:0.06%
総合経費率:0.28%(2021/6/25現在)

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「つみたて全世界株式」の月次資金流入動向

「つみたてんとう」シリーズのファンドのひとつです。「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と商品設計はうり二つで、信託報酬がやや高めです。SBI証券楽天証券のように「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」も買えるなら「つみたて全世界株式」を選ぶ理由はありませんが、「つみたて全世界株式」しか選べない販売会社(地方銀行など)では良い選択だと思います。

まとめ

ファンド名 運用会社 設定日 連動目標 総合経費率 1年リターン 3年リターン(年率) 純資産総額(億円)
全世界株式インデックス・ファンド SSGA 2017/09/08 MSCI ACWI 0.61% 47.53% 17.91% 60
楽天・全世界株式インデックス・ファンド 楽天投信 2017/09/29 FTSE Global All Cap 0.24% 48.17% 17.81% 1,389
SBI・全世界株式インデックス・ファンド SBI AM 2017/12/06 FTSE Global All Cap 0.12% 48.48% 17.70% 426
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 三菱UFJ国際投信 2018/10/31 MSCI ACWI 0.18% 47.92% 18.24% 3,566
たわらノーロード 全世界株式 AM One 2019/07/22 MSCI ACWI 0.24% 47.74% - 13
MAXIS全世界株式(オール・カントリー)ETF 三菱UFJ国際投信 2020/01/08 MSCI ACWI 0.16% 47.59% - 107
つみたて全世界株式 三菱UFJ国際投信 2020/03/06 MSCI ACWI 0.28% 47.52% - 2


各人がご自由に選べばよろしいと思いますが、私は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が費用の安さと指数への追従のバランスがとれているように思います。小型株も投資対象に含みたければ「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」も良いと思います。

資金流入の図を描いてみて気づいたのは、多くのファンドで2021年に入って資金流入が顕著になったことです。

注記

資金流入の図は、投信協会の「投信総合検索ライブラリー」を元に筆者推計。
1年リターン、3年リターン、純資産総額はモーニングスター調べ。



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