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インデックスファンド、米国ETFを中心に、日米の個別株にもちょこちょこ投資(サイコロ遊び)をしています。

一般NISA口座から払い出されるVTをシン・NISA口座へ移し替えるべきだろうか

私はSBI証券の一般NISA口座を持っており、一般NISA口座の半分以上を全世界株式ETFであるVT (Vanguard Total World Stock ETF)が占めています。
一般NISAからシン・NISA(2024年から始まる新制度)へのロールオーバーはできないことから、2024年初から順次VTが特定口座に払い出されます。
このVTの取り扱いを考えてみました。


目次

1.特定口座に払い出されたVTを特定口座で持ち続ける

この場合、VTを持っている間は3か月に1度分配金が出ます。
一般NISA口座ではアメリカ政府が1割課税して終わりでしたが、特定口座ではさらに日本政府が約2割課税することになり、期待リターンが下がることになります。
また、将来の売却時に手数料がかかるほか、値上がり益にも課税されます。

2.特定口座に払い出されたVTをすぐに売却し、シン・NISA口座でVTを買い直す

この場合、売却時に手数料がかかります。SBI証券では約定代金の税込0.495%(上限22ドル)。
特定口座で受け入れてすぐ売却なら、値上がり益への課税額は微々たるものでしょう。
一般的には買い付け時にも手数料がかかりますが、SBI証券のシン・NISA口座では米国ETFの売買手数料が無料(ゼロ革命)です。また、SBI証券の特定口座ではVTの買付手数料は無料です。(SBI ETFセレクション)
保有期間中の分配金については、アメリカ政府が1割課税して終わりです。
シン・NISA口座において値上がり益は非課税です。

3.特定口座に払い出されたVTを売却し、円転し、シン・NISA口座で全世界株式指数投信を買う

SBI証券の特定口座に払い出されたVTを売却し、得たドルを同証券のリアルタイム為替取引で円に替え、SBI-VT(SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド)など国内籍の投信をシン・NISA口座で買う場合を考えます。国内籍の投信はオルカンeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー))でもいいのですが、なるべく条件をそろえるためにSBI-VTにしました。
VTの売却時に約定代金の税込0.495%(上限22ドル)の手数料がかかります。
普通の証券会社であれば為替取引に手数料がかかりますが、SBI証券ではゼロ革命によりリアルタイム為替取引に手数料がかかりません。*1
(つい最近まで、為替手数料は住信SBIネット銀行のほうがSBI証券より安かったので、住信SBIネット銀行に送金してドル円を売買する方法が流行っていたのですが、今はその必要がなくなりました。)
SBI-VTはVTの経費率(0.07%)に加えて0.09%の経費がかかります。
分配金はたぶん出ないでしょう。
投信の売買手数料はかからず、売却益は非課税です。

上記3通りの比較

以上をまとめると下表のとおりです。(今の手数料体系が変わらない場合)

取り扱い 売却時 保有 再売却時
1.VTを特定口座で持ちっぱなし 非該当 経費率約0.07%、分配金に約3割課税 売却手数料0.495%(上限22ドル)、売却益に2割課税
2.VTを売却してシン・NISA口座でVTを買い直し 売却手数料0.495%(上限22ドル) 経費率約0.07%、分配金に1割課税 売却手数料なし、売却益は非課税
3.VTを売却してシン・NISA口座でSBI-VTを購入 売却手数料0.495%(上限22ドル) 経費率約0.16% 売却手数料なし、売却益は非課税

この3通りについて、シミュレーションをしてみます。
上記の手数料体系に加えて、以下の条件を追加します。

  • 2024年初に1万ドルのVTが特定口座に払い出される。
  • VTの期待リターンは年率5%(うち値上がり益3%、分配利回り2%)とする。
  • VTの税引き後分配金を再投資する。
  • VTを特定口座で持ちっぱなしの場合、分配金の外国税額控除をしない。
  • SBI-VTは分配金を出さない。
  • 30年後に売却する。
トータルリターン(分配金再投資)

結果は下図の通りです。

トータルリターン(分配金再投資)

売却時点でパフォーマンスの良い順に、
2.VTが一般NISA口座から特定口座に払い出されたらすぐにVTを売却して、シン・NISA口座でVTを買い直す。分配金はシン・NISA口座で再投資する。
3.VTが一般NISA口座から特定口座に払い出されたらすぐにVTを売却、円に替え、シン・NISA口座でSBI-VTを買う。
1.VTを特定口座で持ちっぱなし、分配金は特定口座で再投資する。
となりました。
2.と3.の差は30年経過後で1.0千ドル(元本の約10%)でした。
2.が3.より良かったのは、経費率の上乗せ分(年率0.09%)の有無が主因です。
もしSBI・VTではなく楽天・VTの場合、上乗せされる経費率は0.16%になり、2.と3.の差は1.7千ドル(元本の約17%)に広がります。
それでも、1.よりは良い結果になります。

1.のパフォーマンスが良くない一つの理由は、分配金に対して日米両方で課税されるからです。外国税額控除を適用すればもう少しパフォーマンスが良くなります。
また、売却時に値上がり益に国内で課税されるので、保有時はパフォーマンスの差がわずかだったのに、売却時に大きな差が生じます。(これは外国税額控除を適用しても変わらず。)

消費するシン・NISA枠

下図は消費するシン・NISA枠を示します。

消費するシン・NISA枠

上図で最もパフォーマンスの良かった2.は分配金の再投資にシン・NISA枠を消費してしまいます。
28年後には投資元本と同じだけの額を分配金の再投資に使ってしまいます。
一方、3.の場合、分配金が出ないと想定すれば、消費するシン・NISA枠は最初に買い付けた額のみとなります。

以上を踏まえると、
3.VTが一般NISA口座から特定口座に払い出されたらすぐにVTを売却、円に替え、シン・NISA口座でSBI-VTを購入
がバランスがいいのかなと思います。

トータルリターン(分配金受取)

参考までに、上記1.と2.のケースについて、分配金を受け取った場合の試算結果を示します。(比較のため、3.は分配金が出ないと仮定)
分配金を投資に回さないため、値上がり益が相対的に減る結果になります。

トータルリターン(分配金受取)

検証

計算の検証のために、理系の錬金術師さんが公開している「新NISA乗り換え損益計算シート」を使ってみます。
www.spin-orbit.com

今回の私のシミュレーションは「新NISA乗り換え損益計算シート」において以下の入力をするのと状況が近いと思います。
初期課税口座額:600万円(2019~2023年までの5年間、一般NISAの満額である120万円を投資したという仮定)
初期元本割合:100%(課税口座に払い出された時点では課税口座における損益は0だから)
毎年新規購入額:120万円
この場合、「NISA乗り換えケース」の利益が「課税口座継続ケース」より常に大きいので、私のシミュレーションと整合する結果になりました。

まとめ

VTが一般NISA口座から特定口座に払い出されたら、すぐにVTを売却し、円に替え、シン・NISA口座でSBI-VTを買うのが良さそうです。


本年もお世話になりました。良いお年をお迎えください。


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*1:おかげさまで、後述するシミュレーションで将来の為替レートを考慮する必要がなくなり、助かりました。