dice play

インデックスファンド、米国ETFを中心に、日米の個別株にもちょこちょこ投資(サイコロ遊び)をしています。

ビットコインを全世界株式ポートフォリオにどう組み入れればよいか考えてみた


前回の記事ではビットコインの期待リターン、リスク、全世界株式との相関係数を計算しました。
dice.hatenadiary.jp

結果は以下の通り。
全世界株式のボラティリティ
 21%(2017年9月~2022年3月実績)
ビットコインボラティリティ
 81%(2017年9月~2022年3月実績)
ビットコインと全世界株式の相関係数
 0.27(2017年9月~2022年3月実績)
ビットコインに必要な超過リターン:
 51%(効用関数の考え方を用い算出)
ビットコインの期待リターン:
 86%(S2Fモデルから算出された2022~2025年の予想とLTCMA2022の為替予想を用いた場合)
 ただし、半減期を迎える前(2022~2024)は4%。
 ビットコインを電子ゴミと思う人は、0%

今回は、この情報を使って、ビットコインポートフォリオにどう組み入れるか検討してみます。


最近、リスク資産は全世界株式インデックスファンドだけでよい、債券なんかいらないという言説を見ます。
ということで、MSCI ACWI連動型投信(ステートストリートの全世界株式インデックスファンド)100%で構成されたポートフォリオビットコインを組み入れるならどれくらいかという観点で分析します。
まあ、正直資産の数が3つ以上になった場合の計算方法を私は知らないので、全世界株式インデックスファンドだけでよいという今の風潮は分析する側としてはありがたいです。


目次

リスク・パリティ戦略

期待リターンの推計は当てにならないので、まずはボラティリティの情報だけでポートフォリオを組んでみます。
ボラティリティの大きい資産ほどポートフォリオの組入比率を下げるリスク・パリティ戦略を使ってみます。

前回の記事より、円建てビットコインボラティリティは81%、円建て全世界株式のボラティリティは21%でした。

これに基づくと、ポートフォリオにおけるビットコインの組入比率は20%、全世界株式は80%となります。

ビットコインの組入比率がずいぶん多いなという印象です。

最小分散ポートフォリオ

次に、各資産のボラティリティ相関係数の情報を使って、ボラティリティを最小にするポートフォリオを組んでみます。

ポートフォリオにおけるビットコインの組入比率を0%、ACWIを100%とすると、ポートフォリオボラティリティが最小の21%となりました。

つまり、ビットコインは組み入れなくてよいと言えます。
ビットコインボラティリティまたは相関係数がもっと小さくないと組み入れるに値しないという計算結果です。

時価総額加重ポートフォリオ

MSCI ACWIのFactsheetによると、2022年3月末現在の指数の対象となる株式の時価総額は66.2兆ドルです。
CoinMarketCapによると、2022年3月27日現在のビットコイン時価総額は0.9兆ドルです。

時価総額に比例した組入比率にすると、ポートフォリオにおけるビットコインの組入比率は1%、ACWIは99%となります。

期待リターンを加味したポートフォリオ

次いで、期待リターンを加味してポートフォリオを組んでみます。

J.P.モルガンの超長期市場予測2022年版(以下、LTCMA2022)に基づき、全世界株式の期待リターンを3.3%、無リスク金利を0%と置きます。
全世界株式のボラティリティビットコインボラティリティ、および全世界株式とビットコイン相関係数は前回の記事における計算結果を使います。

ビットコインの期待リターンの想定は人それぞれだと思います。
そこで、ビットコインの期待リターンをX%と置いたとき、ビットコインと全世界株式をポートフォリオに何%ずつ入れたらよいかを以下に示します。

ビットコインの期待リターン ビットコインの組入比率 全世界株式の組入比率
3%以下 0% 100%
4% 1% 99%
5% 3% 97%
6% 5% 95%
7% 8% 92%
8% 10% 90%
9% 12% 88%
10% 14% 86%
15% 25% 75%
20% 36% 64%
30% 58% 42%
40% 81% 19%
48%以上 100% 0%

表の読み方ですが、ビットコインの期待リターンを年率5%と置くならば、ポートフォリオにおけるビットコインの組入比率を3%、全世界株式を残り97%にすると、シャープレシオが最大になることを意味します。


情報が重複しますが、図でも示しておきます。

ビットコインの期待リターンがポートフォリオに与える影響


ビットコインの期待リターンをゼロと置くと、ビットコインポートフォリオに入ってきません。


前回の記事で紹介したS2Fモデルを参考にビットコインの期待リターンを86%と置くと、ポートフォリオに占めるビットコインの比率が100%(全世界株式は組入不要)になってしまいます。
これは時価総額加重ポートフォリオと大きく異なる結果になります。
ということは、市場参加者はビットコインに対してそこまで高いリターンを期待していないということになります。

ビットコインの期待リターンを4%近辺に置くと、ビットコインと全世界株式の比率が時価総額に近くなります。
全世界株式の期待リターンよりちょっと高めのリターンをビットコインに対して期待しているというのが市場参加者の平均的な見方なのかもしれません。

なお、全世界株式の期待リターンが3.3%という前提で計算しましたが、これはJ.P.モルガンの数値をそのまま持ってきたもので、市場のコンセンサスとまでは言えません。


株式60・債券40のポートフォリオシャープレシオを維持したままビットコインを組み入れるにはビットコインの期待リターンがどれだけ必要か、という分析がLTCMA2022に載っていました。
これによると、ビットコインを2.5%組み入れるには、ビットコインの期待リターンは33%必要です。

まとめ

ビットコインの期待リターン、リスク、全世界株式との相関係数を使って、ビットコインを全世界株式(ACWI)ポートフォリオにどう組み入れるか検討しました。結果は以下の通り。

リスク・パリティ戦略をとる場合、ポートフォリオにおける組入比率は、円建てビットコインが20%、円建て全世界株式が80%。

最小分散ポートフォリオをとる場合、ビットコインが0%、全世界株式が100%。

時価総額加重ポートフォリオをとる場合、ビットコインが1%、全世界株式が99%。

ビットコインの期待リターンを50%とした場合、ビットコインが100%、全世界株式が0%。

ビットコインの期待リターンを0%とおくと、ビットコインの組入比率は0%。

実際の時価総額比に基づき、市場参加者が想定しているビットコインの期待リターンを逆算すると、4%。

様々な考え方で変わるビットコインと全世界株式の組入比率


ビットコインを全世界株式(ACWI)ポートフォリオに組み入れるなら、どんなに多くても2割まで、組み入れなくても全然OK、と言えるのではないでしょうか。

なお、データの収集期間が変われば入力値も変わり、計算結果であるビットコインの組入比率も変わってきます。

参考文献

冨島 佑允「投資と金融がわかりたい人のためのファイナンス理論入門」


<つづく>




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