dice play

インデックスファンド、米国ETFを中心に、日米の個別株にもちょこちょこ投資(サイコロ遊び)をしています。

債券インデックスファンドの上値余地

f:id:NKay:20210327210204p:plain
分散投資を説くインデックス投資ブロガーでも債券には投資しないという主張を見かけることがあり、不思議に思っていました。債券に投資しない一つの理由として、現在は歴史的な低金利(つまり歴史的な高値圏)であり、今後金利が上がると債券価格が下がるので、今は買うのに適切なタイミングではないというのが挙げられます。本記事では債券インデックスファンドの基準価額の上限はどの程度か探ってみたいと思います。

考え方

債券インデックスファンドの月報にはポートフォリオの特性値として「最終利回り」と「デュレーション」が書いてあります。「最終利回り」は債券を満期まで持ち続けた時の利回りを表します。「デュレーション」は利回りが1パーセントポイント下がったとき債券価格が何パーセント上がるかを表し、金利感応度とも言われます。

最終利回りが0%になるという極端な状態での債券価格は(最終利回りー0%)*(デュレーション)で求められると推定しました。以下、この価格を「天井」と言います。

最終利回りがマイナスになるのは異常とみなします。なぜなら最終利回りがマイナスの状態で債券を市場で買い、満期まで持っていると、必ず損をするからです。満期が来る前にもっと高い価格で買ってくれる人がいれば、売り手は利益が出ます。しかし、満期の時点でその債券を持っていた人は損を被ります。いわばババ抜きゲームです。したがって、最終利回りがマイナスになる(天井を突き破るほど債券価格が上がる)と、売り手がたくさん現れて最終利回りが0%まで押し返される(価格が下がる)だろうと考えました。(後述しますが、この考え方は誤りであると後になってわかりました。)
極端な状況を想定しているので、天井まで上がるという意味ではありません。

計算結果

指数・ファンド 最終利回り(A) デュレーション(B) 天井(A*B)
NOMURA-BPI*1 0.19% 9.18年 1.7%
FTSE世界国債インデックス(除く日本)*2 0.57 7.95 4.5
FTSE世界国債インデックス(含む日本)*3 0.52 8.77 4.6
楽天・全世界債券インデックス(為替ヘッジ)ファンド*4 0.83 7.5 6.2
NEXT FUNDS ブルームバーグ・バークレイズ米国投資適格社債(1-10年)インデックス(為替ヘッジあり)連動型上場投信 (2554)*5 1.0 4.7 4.7
野村インデックスファンド・米国ハイ・イールド債券・為替ヘッジ型*6 4.6 5.2 24

上記の数値は2021年2月末現在の値です。この表の「天井」の値にファンドの基準価額を乗じて、上昇余地を推計してみます。


まずは国内債券の代表として「たわらノーロード 国内債券」を見てみます。過去数年の特性値が欲しかったので、ファンドの月報ではなく指数*7から引用しました。2016年と2019年に天井(最終利回りが0%となる基準価額)を破ってしまいました。

f:id:NKay:20210404043054p:plain
「たわらノーロード 国内債券」の天井


マイナスの利回りでも日本国債が買われるのは、最終的に日本銀行が買ってくれる(ジョーカーを引いてくれる)のと、海外投資家にとっては国債の高値掴みによる損失よりも為替ヘッジの利益のほうが大きいのが理由だそうです。マイナス金利の深堀り(債券価格のさらなる上昇)の可能性も想定しておいたほうがよさそうです。
www.nikkei.com
www.itmedia.co.jp
www.motleyfool.co.jp


次に、外国債券の代表として「たわらノーロード 先進国債券<為替ヘッジあり>」を見てみます。特性値が直近3か月分しか得られなかったので、「天井」の点は3つしかありません。直近では10,800円あたりが利回り0%になります。米国債の利回りが比較的高いので、国内債券より天井が高くなっています。ただし、欧州圏でマイナス利回りが生じているので、天井を破る可能性も否定できません。

f:id:NKay:20210404051044p:plain
「たわらノーロード 先進国債券<為替ヘッジあり>」の天井

全世界債券の代表として「楽天・全世界債券インデックス(為替ヘッジ)ファンド」を見てみます。こちらは設定来の月報が得られたので、天井の点が毎月あります。基準価額が11,000円を超えるところに天井があるように見えます。このファンドには、国債が半分、国債より利回りの高い社債などが半分組み入れられているので、さらに天井までの距離があります。

f:id:NKay:20210404052726p:plain
楽天・全世界債券インデックス(為替ヘッジ)ファンド」の天井

ハイリスクになりますが、「NEXT FUNDS ブルームバーグ・バークレイズ米国投資適格社債(1-10年)インデックス(為替ヘッジあり)連動型上場投信」(2554)を見てみます。105,000円あたりが天井になります。楽天全世界債券は残存期間が10年を超える債券が4分の1ほど組み入れられているのに対し、2554は組み入れられている債券の残存期間が10年以下のため、天井までの距離が楽天全世界債券より短くなっています。

f:id:NKay:20210404063725p:plain
「NEXT FUNDS ブルームバーグ・バークレイズ米国投資適格社債(1-10年)インデックス(為替ヘッジあり)連動型上場投信」(2554)の天井

最後に超ハイリスクな「野村インデックスファンド・米国ハイ・イールド債券・為替ヘッジ型」を見てみます。基準価額14,000円近辺が天井ですが、この水準に達することはないでしょう。国債の利回りがかなりのマイナスでないといけないので。

f:id:NKay:20210404061059p:plain
「野村インデックスファンド・米国ハイ・イールド債券・為替ヘッジ型」の天井


参考までに、これらのファンドの基準価額の推移を載せます。

f:id:NKay:20210404063838p:plain
代表的な債券インデックスファンドの基準価額の推移(2019年6月末以降 出所:モーニングスター

まとめ

2021年2月末時点で債券インデックスファンドの最終利回りが0%となる基準価額を試算したところ、国内債券は1.7%、海外国債は4.5%、全世界債券は6.2%、米国投資適格社債は4.7%、米国ハイ・イールド債券は24%、基準価額の上にあることがわかりました。これが債券インデックスファンドの基準価額の上昇余地の限界と言えそうです。しかし、マイナス金利の深掘りによりこれを超える可能性は否定できません。