楽天バンガード 債券部分を値下げ
楽天投信は23日、「楽天・バンガード・ファンド」シリーズの一部のファンドの実質的な費用を引き下げると発表しました。
楽天・インデックス・バランス・ファンド(株式重視型)
0.233% → 0.218%
楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)
0.247% → 0.222%
楽天・インデックス・バランス・ファンド(債券重視型)
0.261% → 0.226%
楽天・全世界債券インデックス(為替ヘッジ)ファンド
0.282% → 0.232%
いずれも年率換算、税込み
「楽天・バンガード・ファンド」シリーズ 実質的にご負担いただく運用管理費用の引き下げについて
このニュースを深掘りしてみたいと思います。
費用の引き下げが実現した理由
投資対象とするVanguard Global Bond Index Fund(以下、バンガード全世界債券インデックスファンド)について、経費率が0.15%のシェアクラスから0.10%のシェアクラスに変更したために費用の引き下げが実現しました。
シェアクラスはカン・チュンドさんがブログでわかりやすく説明されています。機関投資家向けの大口優遇(すなわち経費率の割引)があるということです。
toshin-clinic.com
楽天VTIは2千億円、楽天VTは8百億円を集めているのに比べると「楽天・インデックス・バランス・ファンド」は百億円ちょっとしか売れていない(楽天全世界債券に至ってはわずか3億円)中、なぜ大口優遇が適用されたのでしょうか。
それは「楽天・インデックス・バランス(DC年金)」の存在が大きいと思います。
このファンドは楽天証券のiDeCo(個人型確定拠出年金)のデフォルト商品です*1。デフォルト商品とは、iDeCoの口座開設者がどの商品を買うか決めなかった場合に、自動的に選ばれる商品のことです。
楽天投信の扱っているファンドで、バンガード全世界債券インデックスファンドに投資するのは5つあります。それらの純資産額のうち債券部分を取り出した図を下に示します。
2021年3月25日時点で、年金専用の「楽天・インデックス・バランス(DC年金)」で80億円、「楽天・バンガード・ファンド」シリーズで50億円、合計130億円を集めています。
今回の費用低減は、年金マネーのおこぼれを「楽天・バンガード・ファンド」シリーズも享受したという構図です。
バンガード全世界債券インデックスファンド
バンガード全世界債券インデックスファンドは、日本でよく売っている外国債券インデックスファンドとは異なる特長があります。それは、国債だけでなく社債などにも投資している点です。2021年2月現在、国債は半分にすぎません。結果として最終利回りがわずかですが高くなっています。社債にも投資することにより分散がより徹底され、ほんのわずかですが利回りが高いので、普通の外国債券インデックスファンドより良さそうに感じます。
バンガード全世界債券インデックスファンド 円ヘッジ | たわらノーロード 先進国債券<為替ヘッジあり> | |
ベンチマーク | Bloomberg Barclays Global Aggregate Float Adjusted and Scaled Index in JPY | FTSE世界国債インデックス(除く日本、円ベース、為替ヘッジあり) |
---|---|---|
銘柄数 | 12,901 | 758 |
最終利回り | 0.83% | 0.59% |
平均クーポン | 2.3% | 2.21% |
平均残存期間 | 9.1年 | 9.63年 |
デュレーション | 7.5 | 7.94 |
出所 | リンク | リンク |
2021年2月現在
バンガード全世界債券インデックスファンドの地域別内訳をみると、アメリカが4割、日本が1割となっています。
バンガード全世界債券インデックスファンドの残存期間別内訳をみると、1~10年の債券が7割を占めますが、25年超の債券も1割組み入れられています。
バンガード全世界債券インデックスファンドは投資適格債券のみを組み入れています。投資に不適格な債券(ハイイールド債、がらくた債)を持ちたければ、アメリカに上場している「SPDR ブルームバーグ・バークレイズ・ハイ・イールド債券ETF」(JNK)あたりが候補に挙がります。そこまで分散する必要があるのかは疑問ですが。
楽天・全世界債券インデックス(為替ヘッジ)ファンド
「楽天・全世界債券インデックス(為替ヘッジ)ファンド」(以下、楽天全世界債券)の設定来(2019年2月)の基準価額の推移をみると、「たわらノーロード 先進国債券<為替ヘッジあり>」をずっと下回っています。日本が足を引っ張ったのかもしれません。
アメリカの株式市場に上場しているVanguard Total World Bond ETF (BNDW)というETFと楽天全世界債券はよく似ています。ただし、BNDWは米ドルヘッジ、楽天全世界債券は日本円ヘッジとなっています。BNDWは日本の証券会社では買えません。
これまで楽天VTの実質的な運用管理費用は年0.212%、楽天全世界債券は0.282%でした。楽天全世界債券は楽天VTよりも割高に見え、かつ債券ゆえの低い期待リターンにより、投資対象にはなりにくかったです。楽天全世界債券の費用が0.232%に下がったことで、楽天VTの費用にぐっと近づきました。
楽天全世界債券の純資産額が3億円しかないのは気がかりです。しかし、楽天全世界債券は独特の特長を持っていますので、債券にも国際分散投資をしたいなら、選択肢の一つだと思います。