Monex Activist Fund(以下、MAF)の第一期運用報告書が公表されましたので、見てみます。
MAFとは
MAFは、潜在的企業価値に対して株価が著しく安価に放置された日本企業などの株式を保有し、目的を持ったエンゲージメント(対話)や提案を行い、企業価値と株主価値の中長期的な向上を目指すアクティブファンドです。
個人投資家の声を経営者に届ける仕組みも用意されています。
「アクティビスト」というと、私は村上ファンドがまず思い浮かぶのですが、MAFは経営者に敵対的な関わり方はしない方針です(月次運用報告会より)。
エンゲージメント・ファンドと言った方が実態に近いと思いますが、個人投資家はエンゲージメントという言葉になじみがないので、わかりやすさ重視でアクティビスト・ファンドという名前にしたのだと思います。
友好的な関わり方をするほうが、和を重視する日本の文化に合っていると思います。
経営者と対話のしがいのある会社に投資する以上、最初の1,2年はTOPIXを下回るのは仕方ないと思います。経営者との対話の結果、経営計画に反映され、業績が向上し、株価が上がるというのを目指すのでしょうから、5年後くらいに爆上げしていればいいかなと思います。一方で、足下である程度TOPIXについていかないと、爆上げしてもTOPIXを超えられない事態に陥るかもしれないとも思います。
私は投資資金の7割以上を全世界株式インデックスファンドに投じており、残りで個別株などを持っています。個別株でインデックスを上回るリターンをあげてやるぞと意気込んでいるわけではありません。
株主総会で会社提案に反対票を入れることを目的に、不祥事を起こした会社の株を買うことがあります。少額なので、私が票を投じたところで趨勢に何ら影響はないのですが、反対が一票でも多いことに意義があると考えています。議決権を持てればそれでいいので、たいていは権利付き最終日に買い、翌営業日に売ってしまいます。最近は東芝の株を売買しました。
お行儀の悪い投資行動だと思いますが、そんな私にとって、MAFのコンセプトは共感できるところがあるのです。
ポートフォリオ
運用報告会によると、ポートフォリオの過半数は対話をする十数社に配分し、残りは機動的に売買するしかけになっているとのことです。対話が必要な会社はTOPIXに劣後しやすいでしょうから、それを機動的な売買で多少補うのを意図しているのだと思います。
運用報告書によると、2021年3月10日時点でジャフコグループを22.4%とかなり多く振っています。次いで第一生命ホールディングスが7.5%、NTNが4.6%と続きます。
全組み入れ銘柄は運用報告書全体版で見られます。
また、TOPIX先物を買い建てており、現物株と併せると、純資産を超えるポジションを持っている(純資産の106.7%)のも特徴的だと思います。
対話の成果
今期のハイライトは、最大の組み入れ銘柄であるジャフコグループが、保有する野村総研を売却し、その利益を原資に自社株買いを発表(2021年2月10日)したことです。
パフォーマンス
MAFにはベンチマークも参考指数もありません。運用報告会での説明では、ベンチマークなどを設定すると、指数を意識しすぎて指数に似たポートフォリオを組んでしまうからだということでした。
しかし、やはり何か比べるものがほしいので、勝手にTOPIXと比べることにします。
設定来ではTOPIXをアウトパフォームしています。短期的にはTOPIXに負ける局面があってもおかしくないですが、5年後には勝ち続けてもらいたいと思います。
経費
MAFの経費は、基本報酬、成功報酬、その他に分かれます。
基本報酬は年2.20%(税込み。以下同)、うち委託会社が1.10%、販売会社が1.067%、受託会社が0.033%です。
成功報酬はハイ・ウォーター・マーク(設定来高値)を更新したときに、上回った分の22%が委託会社に入ります。
その他の費用は売買委託手数料、監査費用等です。
ヘッジファンドをほうふつとさせる料金体系です。
今期の費用は10.4%と推定されます。
内訳は、基本報酬が2.2%、売買委託手数料が0.5%、監査費用が0.1%未満、*1
加えて成功報酬が7.7%でした。(筆者推計)*2
信託報酬等の金額は2.93億円でした。*3
うち基本報酬が0.65億円、成功報酬が2.28億円と推定されます。*4
モーニングスターのフィーレベルが1.5%ですから、費用は極めて高いです。しかし、経営者との対話にはものすごい労力がかかるわけですから、正当な対価だと私は思います。10.4%もの費用がかかっていながらTOPIXに勝っている点を評価したいと思います。
日々の報酬は下図の通りです。ジャフコグループとの対話が成果として結実した2月中旬に基準価額が大きく上昇し、多くの成功報酬が発生しているのが特徴的です。
資金流出入
日々の資金流出入を下図に示します。初日に32億円で設定されたのですが、桁違いに多いので、図では省略しています。
2021年2月下旬に約1億円の流入がありました。おそらく2月13日にMAFフォーラムを開催したことやジャフコの自社株買いに関連があるんじゃないかと思います。また、2021年6月からは資金の流入が増えています。従来ネット証券でしか買えませんでしたが、2021年5月28日からは初の対面窓口として新生銀行での販売を開始したのが効いていると思います。*5
マネックス、楽天、SBIの投信買付額ランキングを見ると、インデックスファンドとレバレッジファンドで固められています。ネット証券の客層はMAFに目もくれないのは当然で、窓口に販路を拡大して純資産を拡大するのは妥当だと思います。
2021年6月11日時点の純資産総額は68億円です。
まとめ
Monex Activist Fundは経営者との対話を売りにするアクティブファンドです。第一期のパフォーマンスは、ポートフォリオの2割以上を占めるジャフコグループの行動を促したことなどから好調でした。筆者の推計では、実質的な費用は年率10.4%(うち成功報酬が7.7%)でした。来期も好調なパフォーマンスを維持できるかはわかりませんが、このファンドは長い目で見る必要があることから、指数に一喜一憂してもしかたがないと考えています。
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