金の果実 (1540) が指標価格より割安に取引されている理由
「金の果実」というETFが東証に上場されています。正式名称は「純金上場信託(現物国内保管型)」で、金を投資対象としています。コードは1540。国内の金庫に金の現物が保管されており、ETFの保有口数に応じて、金に交換できる独特な特徴を持っています。金だけでなく、銀、プラチナ、パラジウムのETFもあります。
公式ウェブサイトのトップページに東証終値と指標価格の表があるのですが、東証終値が指標価格に比べてかなり割安になっています。気になって調べてみました。
市場参加者は一口NAVを見ている
下図は指標価格、一口NAV(一口あたりの純資産額)に対する取引所終値のずれの程度を示します。指標価格はインデックスファンドでいうところの指数値、一口NAVは投資信託でいう基準価額に相当すると思います。
青線の計算式:(取引所終値)÷(指標価格)ー1
オレンジ線の計算式:(取引所終値)÷(一口NAV)ー1
この図をみると、指標価格に対して、取引所終値はずるずると下がっていっています。一方、一口NAVと取引所終値のずれは0%前後で推移しており、あまり大きなかい離が生じていません。
つまり、市場参加者は指標価格を見ておらず、一口NAVを参考に値決めしていると言えそうです。
主なかい離要因は信託報酬
取引所終値、指標価格、一口NAVのかい離要因について、目論見書に説明がありましたので、引用します。
指標価格と一口あたりの純資産額(受託者がそのホームページで公表)の乖離要因
・本信託は、金地金を高水準の割合で保有することで、指標価格に連動することを企図していますが、次のような要因があるため、結果として指標価格と一致した推移をすることをお約束するものではありません。
・消費税等の相当額の授受又は信託報酬等の支払い等のために一時的に金銭を保有する可能性があり、本信託の信託財産はすべてが金地金のみとはならないこと。
・信託報酬等のコスト負担があること。
・信託設定(追加信託を含みます。)時に受託者が消費税等の相当額につき本信託に貸付けを行った場合においては当該消費税等の相当額が本信託に還付されるまでの間の借入金の金利負担があること。
一口あたりの純資産額(受託者がそのホームページで公表)と金融商品取引市場での売買価格の乖離
・本受益権は、金融商品取引市場において、一口あたりの純資産額(受託者がそのホームページで公表)より高い価格で取引されることもあれば、低い価格で取引をされることもあります。また、受託者が算出して公表する一口あたりの純資産額(受託者がそのホームページで公表)は、算出日当日の貴金属取引の結果を基に算出するものですので、実際に金融商品取引市場で売買する時点での一口あたりの本受益権の価値を表章したものではありません。
(注)受託者は三菱UFJ信託銀行です。
一口NAVは信託報酬や利払いなどのために、指標価格より低いということです。
2021年10月7日現在、一口NAVは指標価格より4.76%低く、設定から11年強経過していることから、この乖離を年率換算すると0.43%になります。信託報酬は0.40%(税抜)ですから、一口NAVと指標価格の差異はおおむね信託報酬によって説明できそうです。(このETFは、金の延べ棒を金庫から取り出して、現金化することで信託報酬を支払っているのも興味深いです。)
一口NAVはどこにあるか
金の果実を指値注文する際には一口NAVを参照したほうがよさそうです。
一口NAVの値は奥まったところにあります。
金の果実トップページ>データ・レポート>ヒストリカルデータ
ZIPファイルをダウンロード、展開すると、CSVファイルが得られます。これを表計算ソフトで開くと一口NAVにたどり着きます。
一口NAVをトップページの表に入れておいてほしいです…。
銀、プラチナ、パラジウムのETFにおける、乖離度合い
最後に、銀、プラチナ、パラジウムのETFについて、乖離の図を載せておきます。
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