dice play

インデックスファンド、米国ETFを中心に、日米の個別株にもちょこちょこ投資(サイコロ遊び)をしています。

個別株投資のリスク管理

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水瀬ケンイチさんが先日「インデックス投資と両立する個別株投資」というブログ記事を公開しました。
randomwalker.blog19.fc2.com

山崎元さんの記事の紹介になっています。
media.rakuten-sec.net


山崎さんの記事の中で、リスク(ボラティリティ)の目安が示されます。

「例えば、インデックスのリスクを年率リターンの標準偏差で測って20%としよう(実際には時期によって変動するが)。対して、典型的な個別銘柄(大型株だがそこそこに人気の銘柄くらいのイメージだ)1銘柄の投資だと35%くらいのリスクがある。」


しかし、銘柄が大型株か小型株か、景気に敏感な業種かどうか、時期(相場下落時か平穏時か)などによりボラティリティはさまざまです。
個別銘柄のボラティリティを簡単に知る方法を調べました。

過去の変動率

過去の変動率(Historical volatility: HV)を知るにはTradingViewが便利です。
株式とETFであれば、日本市場もアメリカ市場も対応しています。
jp.tradingview.com

fx(インジケーター)を押して、検索窓に「HV」と打ち込みます。
日足チャートであれば、初期設定は計測期間が10営業日になっています。私は20営業日(約1か月)に変更して見ています。後述する予想変動率が1か月を対象としているためです。

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TradingViewによるHVの表示

日足の計算式をMicrosoft Excelの数式風に書くとこうなります。

HV=STDEV.P(LN(当日終値/前日終値),LN(前日終値/前々日終値),…)*SQRT(365)

日本語で書くとこうなります。

当日終値と前日終値の対数変化率を計測期間の日ごとに計算し、それらの標準偏差を求め、約19倍する。

次の表は、執筆時点(2021年4月24日15時ごろ)の主な資産のボラティリティ(計測期間20日)を示します。(TradingViewから取得)

分類 ティッカー HV
全世界株式(米ドル建て) VT 14%
アメリカ株式(米ドル建て) SPX 14%
日本株式(円建て) TOPIX 17%
日本の金属製造業ETF(景気敏感業種の例として) 1623 30%
日本製鉄(景気敏感株の例として) 5401 48%
日本の情報通信・サービス業ETF(ディフェンシブ業種の例として) 1626 15%
NTT(ディフェンシブ株の例として) 9432 26%
新興国株式(米ドル建て) VWO 17%
ドル円 為替レート USDJPY 5%
全世界債券(米ドルヘッジ) BNDW 3%
金(米ドル建て) IAU 17%
コモディティ総合(米ドル建て) GSG 20%
ビットコイン(米ドル建て) BTCUSD 56%
ビットコイン(円建て) BTCJPY 52%


値自体は日々変わるのであまり意味はありません。他の資産と比べた大小関係が重要だと思います。
ここ1か月のHVの傾向は、全世界債券が極めて低く、次いでドル円が低い。全世界株式と金は同じくらい。個別株なら40%も当たり前。ビットコインはさらに値動きが激しいです。
ただし、セオリー通りでないこともしばしばです。例えば、ディフェンシブな業種でもTOPIXのHVを超えることがあります。

予想変動率

むこう一か月先の予想変動率(Implied volatility: IV)を見られるウェブサイトを紹介します。

アメリカ株のIVはMarketChameleonでみられます。
marketchameleon.com

右上の検索窓にTickerを入力し、30-Day Implied Volatilityの欄のHistoricalというタブで見られます。

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MarketChameleonでIVを表示

日本株のIVは大阪取引所の「かぶオプチャート」でみられます。
www.option-info.net

「データ選択」で「HV, IV」を選ぶと、HVとIVの直近3か月のチャートを見られます。

ただし、この値がどれだけ信頼性が高いかはわかりません。
個人投資家にかぶオプ(個別株のオプション取引)を提供している証券会社は限られるため、個人投資家の参加者は多くないと思います。
機関投資家がどれだけオプション取引をしているのかわからないので、取引量がどれだけ多いかわかりません。
もし取引量が少なければ、あまり参考にはなりません。

なお、かぶオプチャートにもHVがありますが、こちらは20営業日の終値の対数変化率の標準偏差の16倍(年間営業日が約256日=16の2乗)に近い数字になっています。
(TradingViewは約19倍なので、同じ銘柄でもかぶオプチャートと若干数字がちがいます。)

年率表記から月、日単位への換算

HVもIVも年率で表記されています。
これを月単位に換算するため、私は年率のボラティリティ0.3倍しています。(正確にはルート12で割ります。)
日単位に引き直すには、年率のボラティリティ0.05倍しています。(正確にはルート256かルート365で割ります。)


換算係数が非常に荒っぽいと感じたかもしれませんが、私は正確さよりも暗算しやすさを重視しています。
正確を期してルート365などで割ったところで、祝日やうるう日により営業日数はゆらぐため、有効数字は2桁がいいところです。そして、割り算より掛け算のほうが暗算しやすい。そもそもボラティリティの値自体が日々変わります。ということで、0.3倍、0.05倍を使っています。

例えば、ボラティリティがだいたい40だったら、一日で2%強(≒40*0.05)、一か月で10%強(≒40*0.3)動いても全然おかしくないという見積もりができます。

インデックス投資と個別株投資の組み合わせ方

全世界株式インデックスファンドへの投資を主体に、個別株にも少し投資したいとします。もし個別株のボラティリティが指数(市場平均)のボラティリティの2倍だとすると、個別株投資は全体の投資額の3分の1以下にとどめておかないと、リスクを取り過ぎかなと思います。
以下の記事では「ポートフォリオのリスクは、保有資産のリスク×保有額比率で加重合計して求める」とあるのを参考にしました。
media.rakuten-sec.net

また、「最初から業種の異なる3銘柄以上に投資」というのも重要ですね。
media.rakuten-sec.net

コロナショックでは、IT株が上がり、航空株が下がるというふうに、業種によって明暗がはっきり分かれました。

銘柄を増やせば増やすほど個別株のポートフォリオボラティリティは下がるため、理屈上は個別株投資が全体の投資額に占める割合を上げられるとは思います。しかし、たくさんの銘柄を持つのに十分な資金がなかったり、銘柄数が多すぎて(ボラティリティの計測を含めた)管理がしきれなくなったり、選ぶ銘柄の業種が偏ったりする(消費者に身近な業種である小売株ばかり買う)こともありえます。そうすると、個別株のポートフォリオは、銘柄数を増やしても、1銘柄の場合と同様全体の投資額の3分の1以下にしておくとボラティリティを管理しやすいように思います。