為替ヘッジコストの要因
個人投資家が柔軟に為替ヘッジをするのに、FXが有力な選択肢であろうと考えています。
例えば、米国株を買うと同時にFXでドルを売り建てれば、為替変動を相殺できると考えています。
FXにおけるスワップポイントの支払いを為替ヘッジコストと見立て、前回の記事でヘッジコストを試算しました。
今回は、このコストの要因を分析してみたいと思います。
方法
次のような計算式を設定します。
コストは前回の記事で求めた値を使います。
政策金利は、外為どっとコムを参考にしました。
ただし、2007年以前のデータが欲しかったため、各中央銀行のウェブサイトから政策金利を引用しました。
(参考)
米国:Federal Funds Target Rate(2008以前), Federal Funds Target Range - Upper Limit(2009以降)
FRB Rates - discount, fed funds, primary credit | FRED | St. Louis Fed
欧州:Main refinancing operations
その他の要因はコストから政策金利を引いた値とします。政策金利では説明できない要因を示し、具体的な内訳はわかりません。主に需給の偏りによるものと思います。取引所FX固有の要因も含まれているかもしれません。
結果
下図に米ドル円の為替ヘッジコストを政策金利とそれ以外の要因に分けた結果を示します。
米ドル円の場合、為替ヘッジコストのほとんどを政策金利要因で説明できることが図から読み取れます。ただし、2016~2019年はその他の要因もいくらか生じています。月次のグラフでわかる通り、主に四半期末にコスト(スワップポイントの支払い)が非常にかさむことがあることから、その他の要因が増大しています。
下図にユーロ円の分析結果を示します。
ユーロ円については、2006~2007年は政策金利要因でだいたい説明できるものの、2007~2013年はうまく説明できていません。2014年以降は政策金利要因がほぼ0になる結果、その他の要因の影響が比較的強くなります。
年末年始の休暇が長いと、年末にまとめてスワップポイントが発生するため、これが「その他の要因」を押し上げる可能性は否定できません。実際のお金のやりとりとずれてしまいますが、分析のためにスワップポイントを年末と年始に按分したらどうなるか、いつか試算してみたいと思います。
まとめ
FXによるスワップポイントの支払い額は主に政策金利の影響を受けると考えられます。現在、新型コロナ対策として日米欧の政策金利が低く抑えられているため、安いコストで為替ヘッジができる状態にあると思われます。コロナ禍が収束し、利上げ局面に入ると、為替ヘッジコストが高くなる可能性があります。「外為どっとコム」の政策金利まとめページを時々見ると、為替ヘッジコストの動向をつかめると思います。