仕組預金「コイントス」の損益分岐点
住信SBIネット銀行には「コイントス」という仕組預金があります。
他の銀行でも類似の商品が取り扱われており、楽天銀行では「楽天デュアル定期預金」と言います。
現在(2020年7月)コイントスのキャンペーンが行われており、関心のある方がいらっしゃると思い、コイントスについて検討してみたいと思います。
コイントスのメリット・デメリットを挙げてみます。
メリット
- 比較的高い金利を得られる。
- 預け入れ期間が1か月と短い。
デメリット
- 中途解約すると元本割れする。
- 預け入れた円が外貨に変わる可能性がある。
- 外貨で払い出された場合、すぐに円に戻すと元本割れの可能性が高い。
中途解約のデメリットを避けるには、預ける額を少しにとどめておく必要があります。
外貨に変わってしまった場合は次の対策が考えられます。
コイントスが有利が不利かを考えるため、1か月ものの円定期預金、1か月ものの外貨定期預金と比べてみたいと思います。
2020年6月18日~7月1日に募集されたコイントス(特約通貨:米ドル)で検討してみたいと思います。
税引き前金利(年換算)は、1か月もの円定期預金が0.02%、1か月もの米ドル定期預金が0.10%、コイントスが5.00%でした。
コイントスの特約レート(おおよそ預け入れ時点の為替レート)は1ドル107.45円でした。米ドル定期預金も同じレートで約定したことにします。(外貨定期預金でも指値が使えますので、非現実的な仮定ではないと思います。)
満期の時点の円換算の損益を計算します。円換算には基準レート(満期日の2営業日前)を使うことにします。(基準日から満期日までの2営業日の間為替レートが変わらないことになり、ちょっといい加減ですが、計算を簡単にするためにこうします。)
計算結果を下図に示します。
横軸は基準レート(おおよそ満期日のレート)で、真ん中に緑色で印をしているのが特約レート(おおよそ預入日のレート)です。右側にいくほど預け入れている間に円安に進んだことを、左側にいくほど円高に進んだことを示します。
縦軸は損益を率で示しており、円換算の評価損益を元本で割って計算しています。マイナスだと元本割れです。
この図を見ると、円定期預金(青)は為替レートに関係ないので、水平の線になります。外貨定期預金(オレンジ)は右肩上がりの線になっており、円安に進むと利益が増えていき、円高に進むと損失が膨らんでいきます。コイントス(グレー)は円安が進んでも利益は一定で、円高に進むと損失が増えていきます。円高の時、外貨定期預金とコイントスの線の間隔は、金利の差を示しています。
まとめると、円安に進むと外貨定期預金が有利、ほぼ為替が動かなければコイントスが有利、円高だと円定期預金が有利となります。
コイントスが最も有利になるのは基準レートが107.09~107.80円/ドルの範囲にあるときと計算されました。
損益分岐点(グラフの線の交点)の計算式は次の通りです。
(基準レート)=(特約レート)*[1+{(円定期預金年利率)-(コイントス年利率)}/12*{1-(税率)}]
外貨定期預金とコイントスの損益分岐点(特約が実行されなかった場合)
(基準レート)=(特約レート)*[1+(コイントス年利率)/12*{1-(税率)}]/[1+(外貨定期預金年利率)/12*{1-(税率)}]
税率は20.315%
上記の計算式は満期になったらすぐ損益を確定する場合の想定です。例えば、特約が実行された場合に円安まで待つ状況は考慮していません。
ちなみに外貨定期預金の金利がコイントスより高い場合は、為替レートにかかわらず外貨定期預金のほうがコイントスより有利になります。
下図は仮にコイントスの年利率が2%、外貨定期預金の年利率が4%の場合を示しています。