原油先物ファンドのまとめ
本記事では原油先物への連動を目指すファンドをまとめます。
検討の結果、「UBS原油先物ファンド」か「NEXT FUNDS NOMURA 原油インデックス連動型上場投信」(1699)が比較的良さそうだと思いました。
UBSーUBS原油先物ファンド
投資信託の中で原油先物への連動を目指すのはこれしかありません。
ベンチマーク(連動対象指数)は「UBSブルームバーグCMCI指数WTI原油指数(円換算ベース)」です。
CMCIはConstant Maturity Commodity Indexの略です。
この指数の特徴は次の通り。
各コモディティで利用可能なすべての満期(3カ月から3年まで)をバランス良く加重することにより、従来のインデックスでは考慮しないリスクの時間分散効果が出ます。
UBS Bloomberg CMCI Index Family | Bloomberg Indices
後述する他のファンドは満期が数ヶ月先の先物しか持たないので、3年先の満期の先物も投資対象にするのは非常に特徴的です。
2021年8月付のFactsheetによると、3ヶ月先が4割、6ヶ月先が2割、1年先が2割、2年先が1割、3年先が1割弱となっています。1ヶ月先、2ヶ月先の先物には投資しません。
Factsheets | UBS Global
本ファンドはスイス籍のETFである"UBS ETF (CH) - CMCI Oil SF (USD)"に投資します。
TradingViewでOILUSA.USDと打ち込むと市場価格が表示できます。
jp.tradingview.com
諸経費は次の通りです。(年率税込。2020年12月付の交付運用報告書より一部改変)
信託報酬 | 0.814% |
---|---|
売買委託手数料 | 0.16% |
その他費用 | 0.03% |
ETF | 0.26%程度 |
合計 | 1.27% |
ファンドは2009年2月に設定。
償還予定日が2022年12月5日となっている点には注意が必要です。ただし、過去に償還予定日が延長されたことがあるので、状況によってはまた延長されるかもしれません。
野村ーNEXT FUNDS NOMURA 原油インデックス連動型上場投信(1699)
このETFは東証に上場しています。
ベンチマークは「NOMURA原油ロングインデックス(円換算)」です。
元々はWTI原油の第1限月または第2限月の先物を投資対象にしていました。
しかし、コロナショックのさなかの2020年4月20日に第1限月の先物価格が歴史上初めてマイナスになってしまいました。
なお、このETFはこのとき第2限月を持っており、第1限月は持っていなかったので、マイナス(すなわち繰上償還)になる事態は回避しました。
翌4月21日より、さらに先の限月にも投資するようにこのETFの運用を変更しました。指数をなぞることよりも、現実的に運用できることを優先したのです。
そしてこのETFを後追いする形で2020年11月30日より指数が変更され、2-3-4限月または3-4-5限月を持つようになりました。
変更後の指数では、第1限月は持たず、3つの限月にほぼ等分に分散して組み入れることになります。
原油先物ETF(1699)の連動対象指標の算出ルール変更について | NEXT FUNDS
原油先物ETF(1699)に関するQ&A|深掘りETF⑪ | NEXT FUNDS
先に紹介した「UBS原油先物ファンド」のベンチマークは元々第1限月も第2限月も持たないため、NOMURAのインデックスと設計がだいぶ違うことがわかります。
信託報酬は年率0.55%(税込)。
2010年5月上場。償還予定日は設定されていません。
マーケットメーカーが入っているため、価格はなめらかに推移するはずです。
SimplexーWTI原油価格連動型上場投信(1671)
このETFのベンチマークは、WTI原油先物の直近限月の清算値を円換算で表示した価格です。
ただし実際には、信託財産の保全を重視するために、期近限月の1期先だけではなく、更に先の複数の期先限月に分散します。
信託報酬は年0.935%(税込)。
2009年8月上場。償還予定日は設定されていません。
マーケットメーカーが入っているため、価格はなめらかに推移するはずです。
WisdomTreeーWisdomTree WTI 原油上場投資信託(1690)
東証に上場しているこのETFのベンチマークは、Bloomberg WTI Crude Oil Multi-Tenor Excess Return Indexです。
ベンチマークは、3つのWTI原油先物契約の単純平均値を参照して計算されます。
変更後の野村のインデックスに近い設計です。
この指数は2020年6月に設定されたため、原油価格マイナス事件を踏まえて新たに設定されたものと推測されます。
以前は別の指数をベンチマークとしていたのではないかと思います。
https://www.bloomberg.com/professional/product/indices/bloomberg-commodity-index-family/
このETFはロンドンに上場しているドル建てETFのCRUDと実質的に同じです。
信託報酬は年0.49%(税込)。2010年3月上場。償還予定日は設定されていません。
マーケットメーカーが入っていないため、ギザギザした値動きになることがあります。
価格の推移
上の図はTradingViewで描画した各商品の2011年初からの価格推移です。
ローソクはWTI原油の直近限月(CL1!)をつなげたもの、オレンジの線が「UBS原油先物ファンド」の投資するETF、緑の線が1699(野村)、黄色の線が1671(Simplex)、紫色の線が1690(WisdomTree)です。
東証上場の1699、1671、1690は米ドル換算してあります。
図の下半分の青い線は直近限月の先物価格を12ヶ月にわたり集計したHistorical volatility (HV)を表します。
ローソクの2020年4月に長い下ひげが生じており、このときマイナス価格になりました。2021年に入るとコロナショック前の価格に回復しています。
オレンジの線はUBSの商品ですが、パフォーマンスはローソクに劣後するもののがんばって追従しています。2021年に入り、コロナショック前の価格に回復しています。
一方、東証に上場している3つのETFのパフォーマンスは2015年くらいからオレンジの線を劣後するようになり、いまだコロナショック前の水準に回復していません。1690(WisdomTree)は、2013年前後に他より大きくパフォーマンスを落としていますが、最近は1699や1671と近い値動きになっています。
直近限月の先物価格のHVは、平常時に40~80%、コロナショック時に200%を超えています。全世界株式ETFが20~25%と言われているのと比べると、原油先物価格は相当荒っぽい値動きをします。
まとめ
これまでに紹介してきた商品をまとめると下表の通りです。
コード | 運用会社 | 銘柄名 | 指数 | 税込信託報酬(%) | マーケットメーカー | 上場(設定)日 |
ー | UBS | UBS原油先物ファンド | UBSブルームバーグCMCI指数WTI原油指数(円換算) | 0.814 | 該当せず | 2009年2月 |
---|---|---|---|---|---|---|
1699 | 野村 | NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型ETF | NOMURA原油ロングインデックス(円換算) | 0.55 | あり | 2010年5月 |
1671 | Simplex | WTI原油価格連動型ETF | WTI原油先物の直近限月の清算値(円換算) | 0.935 | あり | 2009年8月 |
1690 | WisdomTree | WisdomTree WTI 原油ETF | Bloomberg WTI Crude Oil Multi-Tenor Excess Return Index(円換算) | 0.49 | なし | 2010年3月 |
これらの4商品の中では「UBS原油先物ファンド」が良さそうです。
値動きを比べると、直近限月の先物価格へ比較的追随できているように見えます。
また、期限が3ヶ月に満たない先物には投資しないため、2020年4月に起きたマイナス価格の影響をあまり受けなかったように思います。
さらに、1~3年という長期の先物にも投資するため、より分散が効いています。
一方で、現時点では、2022年12月に償還が予定されていることは要注意です。
また、投資信託ゆえに指値注文ができないのはデメリットかもしれません。
先物のロールコストを考慮して、原油を長期に持つのは避け、数ヶ月単位で機動的に売買するという投資方針ならば、指値注文のできるETFがより好ましいでしょう。
ETFの中では「NEXT FUNDS NOMURA 原油インデックス連動型上場投信」(1699)が良さそうです。
1671のベンチマークは明らかに運用実態とずれていますが、1699のベンチマークは運用実態も考慮しており、透明性が高いと思います。
また、1690と違ってマーケットメーカーが参加しているので、変な価格がつきにくいのも評価できます。
加えて、信託報酬が1671より安いです。
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