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インデックスファンド、米国ETFを中心に、日米の個別株にもちょこちょこ投資(サイコロ遊び)をしています。

投資信託「みらい定期便」に対する私見

投信評価会社モーニングスターYouTubeチャンネルで「みらい定期便」という愛称の投資信託の紹介動画が掲載されています。

 

【3社特別対談】ポストコロナの資産運用 毎月分配金を得て資産も守る「みらい定期便®」という考え方 りそな銀行×アムンディ・ジャパン×モーニングスター

youtu.be

運用会社(アムンディ)、販売会社(りそな銀行)、評価会社(モーニングスター)のお三方が「アムンディ・サステナブル・インカム・ファンド(愛称:みらい定期便)」について対談するという25分の動画です。

 

「みらい定期便」の概要

www.amundi.co.jp

毎月分配型で、半年に一回、むこう6ヶ月間の目標分配額を提示します。これは家計のやりくりの見通しを立てやすくするためです。

原則として、投資資産から得られる配当・利息等の範囲内で分配金を支払う、「実力分配ファンド」をうたっています。

好利回りかつ割安な資産に、機動的に配分を変えながら投資する方針です。1割くらい「エクイティリンク債」に投資していますが、なんでしょうねこれ。普通の債券よりハイリスクな感じがします。

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みらい定期便の資産配分の推移(出所:月次レポート2020年12月)



2020年7月現在、世界高配当株式や米国ハイイールド債(がらくた債)より高い利回りとなっています。これは相当にハイリスクな投資をしているように見受けられます。

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みらい定期便の利回り(出所:みらい定期便特設サイト)

ルクセンブルク籍投信等に投資する、ファンド・オブ・ファンズ方式で運用します。

 

購入時手数料はりそな銀行の窓口で税込み1.1%
総経費率は年率1.59%(うち信託報酬は税込み年率0.88%、その他費用が0.02%、投資先ファンドの費用が年率0.69%)
信託財産留保額はなし。

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みらい定期便の総経費率(2020年7月現在)(出所:交付運用報告書)

信託報酬(相談や情報提供の対価)が投資先ファンドの費用(純粋に運用にかかる費用)を超えるのは割高というのが個人的な感覚です。

高齢者が退職金などのまとまった資金でファンドを一括でどかんと買って、毎月分配金で生活費の足しにするというのが、このファンドの基本的な使い方になっています。

 

サステナブル」なのは何か

ファンドの名前に「サステナブル」とあります。普通「サステナブル」というと持続可能な社会を目指す企業に投資するように思います。例えば、再生可能エネルギーなどを開発する企業などです。ただ、投資対象を見ると、持続可能な社会に投資している印象はさほどありません。

「実力分配ファンド」といううたい文句から想像できるように、ファンド名の「サステナブル・インカム」は、分配金の継続性を保つという意味合いというわけです。

 

実力分配は可能か

私の知見不足により、実力の範囲内での分配が本当にできているのか確認するのが困難でした。
運用報告書の分配金の情報を引用すると次の通りです。

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翌期繰越分配金対象額(出所:運用報告書より筆者作成)



運用報告書の翌期繰越分配対象額は、分配余力とみなされることがあります。しかし、グラフを見ると第1期にいきなり440円の翌期繰越分配対象額が計上されていますが、わずか1ヵ月でこれだけの収益を得たとは考えにくいので、会計上の数字に過ぎないと思われます。

また、基準価額以上の分配ができないのにもかかわらず、翌期繰越分配対象額が基準価額を超えるということも計算上は可能という記事を下に引用します。こうしたことから、翌期繰越分配対象額を実力分配の指標とみるわけにもいきません。

gentosha-go.com

 

gentosha-go.com

 

運用報告書(全体版)の「損益の状況」という表の「受取配当金」と「収益分配金」という項目の累計を下図に示します。青い棒がオレンジの棒より長ければ、実力に見合った分配金を出していると言えそうです。ファンドが配当金を受け取るのは数ヶ月に一回、分配金の支払いは毎月と、頻度が異なります。第11期は実力を超える分配をしていますが、第9期はある程度分配の余力を残しているようにみえますので、9~11期をならすと実力相応に分配しているようにも見えます。

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みらい定期便の損益(出所:運用報告書より筆者作図)


ごちゃごちゃ書いてきましたが、分配金落ちした基準価額が個別元本を下回るかどうかで普通分配金か元本払戻金(特別分配金)かが判断されることになるという基本に立ち返ると、分配金を再投資しない基準価額が右肩上がりかどうかで実力分配が実現できているか判断するのだろうと思っています。

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みらい定期便の基準価額(出所:アムンディ)

 

毎月分配より毎月売却のほうが良いのでは?

例えば、今余裕資金が2000万円あるが、預金だと増えないから投資しつつ、年金だけだと生活費が足りないから毎月5万円ずつ取り崩したいという人がいたとします。
すると、分配金利回りが年率3%(=月5万円*12ヵ月/2000万円)以上かどうかがファンド選びの最優先の判断基準になってしまうでしょう。こうなると、何に投資しているかはどうでもよくなってしまいます。

SBI証券などで提供している毎月自動で売却するサービスが普及すれば、分配金の多寡は気にならなくなり、投資の中身に注意が向くようになって、投資家がファンドをより適切に判断できるようになるでしょう。未だに毎月分配型投信が幅をきかせている現状で、定期売却にニーズはあると思います。しかし、りそな銀行でファンドの定期売却はできないようです。

もっとも、私はリタイア層ではないので、このファンドを買う層は別の考えを持っているかもしれません。