dice play

インデックスファンド、米国ETFを中心に、日米の個別株にもちょこちょこ投資(サイコロ遊び)をしています。

ピクテ・グロイン考

2020年10月現在、日本の投資信託で最も資金を集めているのが「ピクテ・グローバル・インカム株式(毎月分配)」(以下「グロイン」)で、純資産は1兆円を超えます。

投信評価会社モーニングスターの朝倉社長がこのファンドの解説をされています。

https://youtu.be/5_HzgB9jkYs

穏やかな語り口ですが、内容は辛口です。
・同種のファンドの平均に比べてリターンがいまいち
・同種のファンドの平均に比べて手数料が高い
・分配金を出しすぎ

グロインのパフォーマンスをETFと比べてみる

グロインがインデックスを上回るパフォーマンスを挙げているのか気になったので、調べてみました。

グロインではMSCI世界公益株価指数を参考にしていますが、この指数に連動するファンドを個人投資家が買うことはできません。
そこで、米国ETFの「iシェアーズ グローバル公益事業 ETF」(JXI)を比較対象にします。
JXIのベンチマークS&P Global 1200 Utilities Sector Indexです。
下図は、分配金込み基準価額の推移です。

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グロインとJXIの価格推移

日本モーニングスター(グロインの基準価額)、米国Yahoo Finance(JXIの市場価格)、みずほ銀行(為替レート)のデータをもとに作図


JXIは円換算し、上場日(2006年9月)終値の市場価格をグロインの基準価額と揃えてあります。
グロインの値動きは2006年から2014年の途中までほぼJXIと同じでした。2014年後半にグロインがパフォーマンスを落とし、それを今まで引きずっている状況です。

グロインとJXIの年間騰落率(前年末から当年末の変化率)を下図に示します。2020年は9月末までで計算しています。

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グロインとJXIの年間騰落率

グロインとJXIの騰落率がほぼ変わらない年が多いことが見て取れます。ただ細かく見るとグロインのほうが若干負け気味です。グロインがJXIに勝ったのは2009、2010、2019年のみです。2014年にはJXIに大負けしています。

JXI設定来(2006年9月)の14年間のパフォーマンスは下図の通りです。

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グロインとJXIのパフォーマンス

グロインはJXIより値動きがゆるやかではある(ボラティリティが低い)ものの、リターンが低いため、シャープレシオ(リターン/ボラティリティ)がJXIより低くなっています。
(仮に手数料が下がって)リターンが3%に上がると、シャープレシオはJXI並みになります。

グロインの参考指数

グロインの運用報告書(全体版)には参考指数が記載されています。MSCI世界公益株価指数を円換算し、設定日(2005年2月28日)を10,000として指数化した値です。2020年8月11日時点の参考指数は15,034となっています。
グロインの8月11日時点の基準価額は2,633円ですから、投資対象の株式の配当金を超える金額をグロインが分配しています。インカムゲインだけでなくキャピタルゲインも分配しています。
また、同日の分配金込み基準価額は19,437円で、参考指数15,034を上回っていることから、一見するとグロインが参考指数に勝っているように見えます。
しかし、気をつけなければいけないのは、運用報告書には明記されていないものの、この参考指数は「配当を除く」指数と思われます。
配当を含むと指数は2.5万くらいですので、グロインが指数に負けている可能性が高いです。

グロインの経費率をETFと比べてみる

グロインの総経費率は年率1.82%(運用報告書より)、JXIは0.46%でした。グロインはJXIの約4倍です。グロインは毎営業日動画を配信していますので、当然手数料は高いでしょう。

グロインの代わりになるファンドはあるか

本稿で取り上げたJXIはSBI証券などで買えますが、外国株式口座を開設する必要があります。
グロインの投資対象がグローバル公益株式と独特なので、国内籍のインデックスファンドやETFで代用できるものは見つかりませんでした。

まとめ

グロインは、投資対象(グローバル公益事業)の似たETFであるJXIにパフォーマンスで及びませんでした。
グロインは、JXIの4倍近い手数料がかかっています。
グロインを買っている方々は、手厚い情報提供や独特な投資対象、毎月分配に魅力を感じているのかもしれません。