「<購入・換金手数料なし>ニッセイ世界株式ファンド(GDP型バスケット)」というインデックス・バランス・ファンドが2020年7月に設定されました。このファンドは国内株式、先進国株式(除く日本)、新興国株式へ投資し、資産の配分比率は一国の経済規模を表す名目GDP(国内総生産)総額の比率に基づきます。
これに対し、株式時価総額比によって投資割合を決定するタイプの全世界株式ファンドとしては「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」などがあります。
GDPの比率と株式時価総額の比率を見比べると、新興国の占める割合の違いが目を引きます。GDP比だと4割、時価総額比だと1割です。GDP比のほうが時価総額比よりも新興国の割合が大きくなります。
なぜこれほど違いが生じるのか考えてみました。
GDPは、乱暴に言えば、国内にあるすべての会社の利益の総和です。
しかし、すべての会社が上場しているわけではありません。民間の非上場企業や国営企業もあります。
また、上場企業であっても、創業者の持ち分など、市場に出回らない株式(固定株)があります。
加えて、新興国では、外資規制があります。
さらに、株価には将来の会社の利益も織り込まれているため、株価は一株あたりの利益(EPS)の何倍もの値がついています。この倍率をPER(株価収益率)と言いますが、銘柄ごとに様々です。
このような理由により、GDPの比率と株式時価総額の比率は異なると考えています。
新興国は株式市場が未熟ゆえに、株式時価総額に占める新興国の比率がGDPほど大きくないのだと考えています。
具体的には、国営企業が多い、外資規制が強いといったことが挙げられます。
端的な例はサウジアラムコです。同社の時価総額は世界でも五本の指に入る巨大企業です。*1
しかし、浮動株(市場で容易に売買される株)がとても少ないので、MSCI ACWIなどの全世界株価指数に占める割合はわずかです。
Vanguard World Total Stock ETF (VT)に占めるサウジアラムコの割合は0.03%に過ぎません。*2
より抽象的に言えば、新興国は民主主義が保障されていない、ということでしょう。
民主主義と1人あたりGDP - 40代でアーリーリタイアしたおっさんが たわら先進国株でベンツを買うブログ
最近入ってきたニュースですが、中国政府が営利目的の学習塾設立を禁止する規則を発表し、中国の塾関連株が30-40%急落しました。少子化の一因とされる家計の教育費負担の軽減が狙いとのこと。これらの株は上場廃止になるリスクがあります。中国の共産主義が露骨に表われた格好です。確か中国では土地は国のものだったと思います。中国政府は株も同じような感覚でとらえているのかもしれません。日本のように私有財産は保護されないのかも。
私は、株式市場をあるがままに受け入れるという考えから、株式時価総額比によって投資割合を決定するタイプの全世界株式ファンドをポートフォリオの主軸にしています。
中国政府の豹変ぶりに一抹の不安があるものの、経済発展を取り込みたいので、新興国株を積極的に外そうとは思いません。
一方で、時価総額比率を超えて積極的に持ちたいとも考えていません。
GDPに基づき配分比を決めるファンドは他にもあります。
世界経済インデックスファンド
GDPに基づき配分比を決めるファンドの元祖です。株式と債券を半々に持ちます。
信託報酬 年率0.55%(税込)
2009年設定
SMT 世界経済インデックス・オープン
こちらのファンドもGDPに基づき配分比を決めます。株式と債券を半々に持ちます。
信託報酬 年率0.55%(税込)
2017年設定
「世界経済インデックスファンド」も「SMT 世界経済インデックス・オープン」も違いはほとんどありませんが、SMTのほうがより厳密にGDP比率に近づけることを目指しているような印象を持っています。
本記事ではGDPの比率に基づくファンドを三つ紹介しましたが、いずれも、日本、先進国(除く日本)、新興国の3資産の比率はGDPに基づきますが、それぞれの資産の中身は時価総額比率で構成されていることは留意が必要です。
本記事には続編があります。
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