コモディティ・インデックス・ファンドのまとめ
金融市場では様々なコモディティ(原油、金属、農畜産品といった商品)が取引されており、それらの総合的な値動きを表す指数があります。以下では、商品総合指数ということがあります。この指数への連動を目指すインデックスファンド(指数連動型投資信託)があります。
コモディティ・インデックス・ファンド
償還日が設定されていないコモディティインデックスファンドを表にまとめました。
ファンド名 |
連動指数 |
総経費率 |
信託報酬 |
その他費用 |
投資先ファンドの費用 |
設定年月 |
純資産 |
5年リターン |
ダイワ/“RICI(R)”コモディティ・ファンド |
RICI |
2.22% |
1.13% |
0.03% |
1.05% |
2008-06 |
19 |
-8.04% |
GSCI |
1.11 |
0.26 |
0.12 |
0.74 |
2013-09 |
8 |
-11.92% |
|
SMTAM コモディティ・オープン |
BCOM |
0.97 |
0.94 |
0.04 |
|
2013-12 |
4 |
-6.28% |
BCOM |
0.92 |
0.44 |
0.03 |
0.46 |
2015-06 |
22 |
-7.14% |
(注)
・純資産の単位は億円
・純資産と5年リターンは、モーニングスターのウェブサイトより(2020年11月14日閲覧)
ダイワは総経費率が2%かかり、残りの3ファンドが1%前後です。eMAXISが純資産が一番多くなっています。
インデックスの特徴
上記ファンドの連動指数は3種類あり、指数により商品各銘柄の配分比率が異なります。表中では指数をRICI, GSCI, BCOMと略記しています。
RICIはRogers International Commodity Indexで、流動性と消費動向を勘案して配分比率が決定されます。
GSCIはS&P GSCIで、 かつてはGoldman Sachs Commodity Indexと呼ばれていました。生産量で配分比率が決まります。
BCOMはBloomberg Commodity Index(ブルームバーグ商品指数)で、流動性(先物取引量)と生産量を2対1で重み付けして配分比を決めます。ただし、商品の種類の分散を図るため、特定の銘柄に偏らないようにしています。個々の商品(原油など)が15%を超えないこと、商品のグループ(エネルギー商品など)が33%を超えないことなどの上限が設けられています。
具体的にウェイトを見てみます。上記コモディティインデックスファンドの2020年9月分の月報に記載してある商品のウェイトを下図に示します。
GSCIはエネルギー(主に原油)に偏重しており、およそ半分を占めます。貴金属は1割未満です。RICIはGSCIに比べ、エネルギーが少ない分農産物(穀物など)が多めです。BCOMはRICIに比べてエネルギーが更に少なく、代わりに貴金属(金など)が多めです。
生産量と流動性、そしてBCOMのウェイトをブルームバーグの指数解説文書から引用し、下図に示します。
エネルギーが流動性も生産量も6割以上を占め、圧倒的です。しかし、BCOMには上限が設定されているため、全体の3分の1を超えることはありません。
工業用金属は流動性、生産量ともに10%弱程度のウェイトですが、BCOMではその倍くらいの重み付けがされています。エネルギーのウェイトが押さえつけられている反動で工業用金属が多くなっていると見てとれます。
貴金属は生産量が極端に少ないものの、流動性が大きく、活発に取引されていることがわかります。BCOMには2割程度組み入れられています。
農産物は流動性、生産量とも同じくらいのウェイト(15%弱)ですが、BCOMではウェイトが30%近くなっており、流動性や生産量の倍くらいの重みが付けられています。これもエネルギーの反動でしょう。
畜産物は生産量で見ると一定の存在感があるものの、流動性は乏しいです。
畜産物は冷凍保存しておかないと腐ってしまうことが関係しているのかなと思います。
生産量のウェイトがGSCIと異なる理由は精査できていませんが、データの取得タイミングや、生産量の出典の違いなどがあるかもしれません。
価格推移
米国市場に上場しているETF/ETNでリーマンショック直前から現在までの価格の推移がわかります。
図中GSGは、GSCIへの連動を目指すiShares S&P GSCI Commodity-Indexed Trustです。「iシェアーズ コモディティインデックス」の実質的な投資対象です。
RJIはRICIへの連動を目指すElements Rogers International Commodity Index-Total Return ETNです。
DJPは、BCOMへの連動を目指すiPath Bloomberg Commodity Index Total Return ETNです。
USOは、原油価格への連動を目指すUnited States Oil Fund, LPです。
いずれもSBI証券では取り扱いがありません。
GSG, RJI, DJPのいずれも似たような値動きをします。図の下側にCORREL (52)とありますが、これはGSGとその他のETF/ETNとの相関係数を示しています。1に近いほど同じ動き、0に近いと無関係、-1に近いと逆の動きを示します。52週(=1年)分のデータで線が描かれています。RJI, DJPともにGSGと正の相関が長い間続いています。
さらに、これら3つはUSOとも似た動きなので、商品総合指数は原油価格に引っ張られる傾向が見られます。
価格の推移をみると、リーマンショックの3ヶ月前に高値をつけた後、一年で真っ逆さまに落っこち、2011年に値を少し戻したものの、以降長期右肩下がりです。
原油価格がうんと上がらないとコモディティインデックスファンドの値上がりは期待薄です。シェールオイルという技術的なブレイクスルーのおかげでアメリカの原油の供給が増え、市場シェアを取られたくないOPECが減産しないので、価格が低位に安定しているのが現状です。
原油を輸入に頼る日本にとって原油が安いことは良いことです。ただし、安すぎると省エネへのインセンティブをそぐので、気候変動対策が進まない遠因になりえます。
コロナ禍が収束した後、経済の回復により原油消費が復活する可能性はあると思います。
長期的(2050年ごろ?)には脱炭素化が進むと思いますが、そのときには指数のウェイトが大きく変わり、原油の占める割合は小さくなるでしょう。
注意点
コモディティインデックスファンドは長期に持てば持つほど価格が下がってしまいます。これは、商品の取引に先物を利用しているためです。先物は期限の短いもの(期近物)より長いもの(期先物)のほうが価格が高い(コンタンゴ)のが普通です。期限が来てしまうと現物を受け取る必要があるため、現物を受け取らずに長期に持つには期近物から期先物へ乗り換えを繰り返す必要があります。
ゆえに、コモディティインデックスファンドは長期投資に不要という割り切った考え方もありえます。例えば、農林水産業や鉱業の株式を持つことでコモディティの代用とするという考え方です。ここで、コモディティETFとエネルギー株ETFを比べてみます。
図中GSGは、GSCIへの連動を目指す米国ETFです。IXCは世界のエネルギー企業の株価指数への連動を目指す米国ETFであるiShares Global Energy ETFです。図の上側が週足の価格の推移、下側が52週間の相関係数を示します。両者はまあまあ似たような動きをしそうだと言えそうです。そして、GSGのほうが圧倒的にパフォーマンスが悪い。
では、株式とは違った値動きを期待してコモディティインデックスファンドを少しだけ持つという考え方ができるのでしょうか。次の図は全世界株式ETFとコモディティETFを比べています。
全世界株式ETFはVanguard Total World Stock ETF (VT)、コモディティETFはGSG、RJI、DJPです。株式が下がるときにコモディティが上がるのが理想ですが、実際には一緒に下がることが多いです。
まとめ
コモディティインデックスファンドは長期投資に不要と割り切ってもかまわないと思います。コモディティインデックスファンドは値下がりしやすい商品設計になっています。原油安の市場環境が続いていることから、価格は長期右肩下がりでした。また、コモディティは実需が中心でしょうから、値上がりを期待するマーケットでもないと思います。商品市況の体温計としてウォッチリストに入れておき、ニュースが出たら価格を見る(が、投資しない)というくらいの距離感がちょうど良いかもしれません。
コモディティインデックスファンドによって連動する指数が異なり、商品のウェイトが異なりますが、長期的には似た値動きが見られます。
あえて投資するなら、経費率の安さ、純資産の多さの観点では「eMAXIS プラスコモディティインデックス」ですが、ベンチマークの同じ「SMTAM コモディティ・オープン」よりリターンが低い点は留意が必要です。
最後に、コモディティ(GSG)、原油(USO)、金(IAU)、全世界株式(VT)の長期価格推移の図を示します。
参考資料
Yahoo Finance - Stock Market Live, Quotes, Business & Finance News
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